目次 II-7


7 退職金前払制度と企業型年金の併用


Question
 確定拠出年金法の企業型年金の採用を検討しています。退職金前払制度を導入して、毎月の拠出金を従業員に直接支給することは可能でしょうか。





(1) 退職金前払制度

 退職金前払制度とは、給与や賞与に退職金の一部を付加して支払う方法で、退職時には退職金を支払わない制度です。これを確定拠出年金法の企業型年金(以下「企業型年金」といいます。)の設計で、導入することができます。

 企業型年金では、従業員のうち企業型年金に加入を望まない者に加入を付与しないことが可能です。これは企業型年金加入者の範囲を決める確定拠出年金法第3条第3項第6号中の「一定の資格」として、従業員のうち、「加入者となることを希望した者」のみ企業型年金加入者とすることが規定できるからです。(「確定拠出年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)」平成13年8月21日年発第213号、厚生労働省年金局)

 この場合、加入者とならないことを希望する従業員に対して、他の退職給付制度あるいは退職手当前払制度が適用され、不当に差別的な取扱いを行うこととならないようにすることが必要です。

 このように企業型年金の制度設計で、退職金前払制度の導入が可能です。従業員は企業型年金と退職金前払制度との選択が可能になり、企業型年金の退職給付支給年齢が60歳からであることから企業型年金を選ばない人にとっても、魅力のある退職給付制度が構築できます。


(2) 会計処理

 退職金前払制度は、確定拠出年金制度と同様に、退職金の支払ごとに費用が発生し、退職給付債務がゼロとなります。企業にとっては、退職金前払制度と確定拠出年金制度との違いは、支払先が異なるだけです。


(3) 税務処理

 退職金前払制度は、従業員にとって、通常の給与と同じであり、所得税及び住民税が課税されます。したがって、給付設計において、所得税及び住民税負担分を加算するケースもあります。


(4) 確定拠出年金の中途引き出し要件の緩和

 企業型年金加入者が、確定給付型企業年金がある企業に転職又は専業主婦あるいは公務員になった場合、その人は個人型確定拠出年金に移り、その人の年金資産は国民年金連合会に移換します。この場合、以後の拠出ができなくなり、運用指図のみ行うこととなります。このような人については、企業型年金加入者期間及び個人型年金加入期間の合計である通算拠出期間が3年以下であり、かつ、他の要件を満たす場合は個人型確定拠出年金に加入後、脱退して、脱退一時金を受け取ることができます。(確拠年金法附3)

 この中途脱退は、要件が多くあり、適用者は限定的でしたが、平成16年度の年金制度改正により、要件が緩和されました。(平成17年10月1日施行)改正後の要件は、個人別管理資産が少額であり、資格喪失日の属する月の翌月から起算して6か月を経過していないこと等です。(国民年金法等の一部を改正する法律40、確拠年金法附2の2)

 この改正により、年金資産が少額である場合に手数料で資産が減少又は滅失するのを防ぐことが可能となります。

 

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