目次 II-6


6 退職一時金制度から確定拠出年金制度への移行


Question
 当社は退職一時金制度を採用しています。このたび、退職給付制度改革の一環として、確定拠出年金制度を導入することを検討しています。移行に当たっての留意点を説明してください。



Answer

(1) 移換期間及び移換限度額

 退職一時金制度を採用している会社が、退職給与規程を改正し又は廃止することにより退職一時金制度の一部又は全部を確定拠出年金制度に移行する場合、所定の計算による金額を、企業型年金の資産管理機関の個人別管理口座に拠出することができます。なお、この場合の確定拠出年金制度は、確定拠出年金法に定める企業型年金に限ります。

 移換期間及び移換限度額は次のとおりです。(確拠年金法令22(5))

(1) 移換期間

 退職給与規程の改正又は廃止が行われた日(以下、「移行日」といいます。)の属する年度の翌年度から起算して、3年度以上7年度以内の企業型年金規約で定める年度までの各年度に、均等に分割して移換します。

 なお、企業型年金規約で定める最後の移換日までに当該規約の企業型年金加入者が資格を喪失する場合には、その者に係る移換可能額のうち移換していない金額は、一括して移換することができます。

(2) 移換限度額

 移換限度額は、(a)移換元の退職一時金制度で規定する移換可能額と、(b)移換先の企業型年金で規定する移換限度額とを比較して、いずれか低い金額となります。

(a) 移換元の退職一時金制度で規定する移換可能額

 退職給与規程を改正又は廃止することにより、資産管理機関に移換する資産で、次の(イ)に掲げる金額から、(ロ)及び(ハ)に掲げる金額を控除した金額に相当する部分の金額の範囲内に限ります。なお、この相当する部分の金額には、移行日から資産の移管を受ける最後の年度までの期間に応ずる利子に相当する額を加えます。この場合の利率は厚生労働大臣が定める率とします。(「確定拠出年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)別紙5(2)」平成13年8月21日付年発第213号、厚生労働省年金局)

(イ)  移行日の前日において在職する使用人の全員が、移行日の前日において自己の都合により退職するものと仮定した場合における、当該使用人につき移行日の前日において定められている退職給与規程により計算される退職給与の額の合計額

(ロ)  (イ)に規定する使用人のうち移行日に在職しているものの全員が、移行日において自己の都合により退職するものと仮定した場合における、当該使用人につき移行日において定められている退職給与規程により計算される退職給与の額の合計額

(ハ)  退職給与規程の改正又は廃止により、移行日において同時に他の退職給付制度から移換する資産を移換することとなった場合には、当該移換することとなった資産に相当する額

(b) 移換先の企業型年金で規定する移換限度額

 企業型年金の規定による移換限度額は、移行日の属する月の前月の企業年金加入者が、使用された期間の各月に企業が企業型年金の掛金限度額を拠出したと仮定した場合の累積合計額に、各月の拠出限度額に当該各月の翌々月から移行日の属する月の前月までの期間に応ずる利子相当額を加えた合計額となります。(確拠年金法令23(1))

 利率は、平成9年4月以前の期間は年率5.5パーセント、平成9年4月以降の各年度は10年もの国債の5年平均利回りを勘案して厚生労働大臣が定める率となっています。(確拠年金法規29)

 なお、以前に移換が行われている場合は、当該移換された資産の元利合計額と、すでに拠出した掛金拠出額の元利合計額を移換可能額から控除します。(確拠年金法令23(2))

 ところで、移換先の企業型年金の移換限度額は、平成16年度の年金制度改正で移換限度額が撤廃されました。(平成16年10月1日施行)ただし、上記(a)の移換元の制度で規定する移換可能額の規定は改正されずに存続します。(国民年金法等の一部を改正する法律38、確拠年金法54(1))


(2) 法人税法の取扱い

 移換による拠出額は、税務上、損金算入できます。(法令135(1)三)

 平成14年度の税制改正で法人税法上の退職給与引当金制度は廃止され、平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度から10年間にわたって所定の割合により取り崩さなければなりません。この取崩し中の事業年度において、取り崩した後の退職給与引当金の額が期末の在職使用人の自己都合による退職給与要支給額を超える場合は、その超える金額を取り崩さなければなりません。しかし、この取崩し規定の適用中の法人であっても、確定拠出企業型年金の実施又は企業型年金の規約の変更により退職給与規程を改正し、退職給与の全部又は一部に相当する金額が企業型年金に移換されている場合は、期末の在職使用人の自己都合による退職給与要支給額との比較による取崩し規定は、適用されません。(法法附8(3)(平成14年7月3日法律79号)、法令附5(10)(平成14年8月1日政令271号))


(3) 会計処理

 退職一時金制度の移行部分の終了処理をするとともに、(借方)退職給付引当金/(貸方)現金、という仕訳により移換金額を拠出します。

 また、分割拠出の場合は、(借方)退職給付引当金/(貸方)未払金、となります。

 

目次 次ページ