目次 II-2


2 確定拠出年金制度の税務


Question
 確定拠出年金制度の導入を検討しています。税制面の取扱いについて説明してください。



Answer

(1) 企業における税務

 確定拠出年金法の確定拠出型の退職給付制度には、企業型年金と個人型年金がありますが、以下では、企業のみが掛金拠出を行う企業型年金について説明します。

(1) 企業が拠出金を拠出する段階

 企業型年金の拠出金は、法人税法上、損金に算入できます。(法令135三)従業員1人当たりの年間拠出限度額は、厚生年金基金又は税制適格退職年金等を実施していない企業の場合は、月額36,000円(年額432,000円)です。また、厚生年金基金又は税制適格退職年金等を実施している企業の場合は、月額18,000円(年額216,000円)です。(確拠年金法令11、同附2(2))この差異は、税制上有利な企業年金をすでに採用している企業が、重ねて企業型年金を取り入れた場合、税制が有利になりすぎるため、調整しているものです。企業型年金では掛金拠出が企業のみに限られており、従業員自ら加算して拠出することはできません。

 企業の拠出金は、実質的には従業員への給与支給ですが、拠出時点では従業員に対して所得税及び住民税は課税されません。(所令64(1)四)

 なお、平成16年度の年金制度改正により、確定拠出年金制度の拠出限度額が引き上げられます。企業型年金での引上げ額は次のとおりで、施行日は平成16年10月1日です。(「平成16年年金制度の改正案のポイント」厚生労働省年金局)

 ・他の企業年金がない場合 月額36,000円―→月額46,000円
 ・他の企業年金がある場合 月額18,000円―→月額23,000円

(2) 年金積立金を運用する段階

 確定拠出年金法の年金積立金の運用益は非課税です。(法法12(1)、所法13(1)、176(1)二)。しかし、投資信託の収益分配金又は預貯金、国債等の利息などの運用益以外の貯蓄に対しては、20%の源泉分離課税(所得税15%、住民税5%)が行われます。

 なお、勤労者の財形住宅貯蓄、マル優などの税制優遇の適用もあります。

 また、退職年金等積立金に対する特別法人税等は、運用する法人の平成11年4月1日から平成17年3月31日までに開始する各事業年度においては、課税されないことになっています。(措法68の4)

(3) 退職年金を給付する段階

 確定拠出年金制度の給付には、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金があります。老齢給付金を一時払いで受けた場合は退職所得として取り扱われ、退職所得控除が適用されます。(所法30、31(1)三)年金払いで受け取った場合は雑所得となり、公的年金等控除が受けられます。(所法35(3)三)障害給付金は非課税扱いです。(所令30、所基通9−21)死亡一時金は相続税の課税対象とされます。脱退一時金は一時所得扱いになります。

 

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