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II 退職年金制度をめぐる税務 |
1 退職給付制度の税制措置 |
(1) 税制適格の企業の退職給付制度 退職給付制度のうち、税制上有利な制度として、次の制度があります。
これらの退職給付制度は、企業が掛金、拠出金あるいは共済掛金(以下、「掛金等」といいます。)を拠出する段階で損金算入することができます。税制上の適格要件として、いずれも、制度設計上の厳格な要件が規定されています。 なお、税制適格であるキャッシュバランスプランは、確定給付企業年金法に定める確定給付企業年金制度の一形態として導入できます。 また、平成15年5月に規制緩和の一環として、従来型の厚生年金基金制度にもそのまま導入可能となりました。さらに、制度設計の弾力化も図られ、確定給付企業年金制度、厚生年金基金制度において、キャッシュバランスプランを導入していない状態のままでも支給開始後の年金額について最低額を保証しながら、国債等の利回り等の変動指標に連動させる改定ができるようになりました。つまり、キャッシュバランスプランの類似制度が導入できるようになりました。 (2) 日本の退職給付制度の税制の概要 企業の退職給付制度において、所得の発生や移転に伴い課税される局面は、(1)企業又は個人が掛金等を拠出する段階、(2)年金積立金を運用する段階、及び(3)退職年金を給付する段階です。それぞれの段階での課税は次のとおりです。 (1) 企業又は個人が掛金等を拠出する段階 企業の掛金等は、拠出限度額内あるいは財政計算上の必要とされる限度内の金額は損金算入できます。なお、その掛金等は従業員に対する実質的な給与ですが、従業員に所得税及び住民税は課税されません。また、従業員本人が拠出する掛金等は、退職給付制度の違いにより、社会保険料控除(全額)又は生命保険料控除(一部)の対象になります。 (2) 年金積立金を運用する段階 年金積立金の運用収益に対しては課税されません。ただし、(1)のとおり、企業の掛金等が実質的に給与であるにもかかわらず、その課税が退職年金給付時まで猶予されていることに鑑み、年金積立金を課税標準とする特別法人税等(1.173%)が課されます。ただし、特別法人税等は、年金積立金の運用収益の低迷を考慮して、平成11年4月1日から平成17年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、課税されないことになっています。(措法68の4) (3) 退職年金を給付する段階 退職年金等の受給者が、退職年金又は退職一時金を受給した段階で、受給者に所得税及び住民税が課税されます。この課税は、一時金か年金かの受給形態又は退職給付制度の種類により、退職所得又は公的年金等に係る雑所得として行われます。 |