目次 I-21


21 代行部分に係る遅延処理項目の未処理額


Question
 当社は、前期に厚生年金基金の代行部分の返上を行い、将来分支給義務免除の認可を受け、過去勤務債務の処理を行いました。当期に過去分返上認可を受けましたので、代行部分に係る退職給付債務を最低責任準備金残高に修正するとともに、会計基準変更時差異等の遅延処理項目を損益に計上する予定です。この場合における遅延処理項目の損益計上額の算定方法を説明してください。



Answer

 厚生年金基金の代行部分の返上の過程において、過去分返上認可があったときは、当該認可の日の属する事業年度に、未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異の未処理額のうち、代行部分に係る部分の金額を損益に計上します。


(1) 未認識過去勤務債務

 過去分返上認可の時点での未認識過去勤務債務のうち、代行部分に個別対応する金額は全額損益処理を行い、個別対応しないことが明らかな金額は損益処理の対象から除外します。また、未認識過去勤務債務のうち個別対応しているか否かが不明の金額は、按分計算によって損益処理する金額を求めます。

 例えば、平成14年の厚生年金保険法の改正により生じた過去勤務債務は、代行部分に個別対応しますので、全額損益処理をします。また、将来分支給義務免除により生じた過去勤務債務も、代行部分に明らかに個別対応しますので、損益処理をします。個別対応関係が不明確なその他の未認識過去勤務債務については、退職給付債務の代行部分と加算部分の比率により按分計算して、損益処理する金額を求めます。

 なお、過去分返上認可の時点まで、費用処理額は通常の退職給付費用に含めます。


(2) 未認識数理計算上の差異

 未認識数理計算上の差異は、年金資産に発生した数理計算上の差異と、退職給付債務に発生した数理計算上の差異により構成されていますが、いずれも、代行部分と個別対応する部分はありません。したがって、過去分返上認可の時点での当該返上部分に係る未認識数理計算上の差異を、按分計算で算定する必要があります。この按分計算は、過去分返上認可の時点で、退職給付債務全体に占める代行部分の割合で計算します。割合の計算は、過去分返上認可の日に近い月末時点で行うのが実務的です。この場合、過去分返上認可の時点まで、費用処理額は通常の退職給付費用に含めます。


(3) 会計基準変更時差異

 会計基準変更時差異は、退職給付会計の導入時点の差異額ですので、代行部分との対応関係は不明確です。したがって、過去分返上認可の時点の未処理額を按分計算で求める必要があります。この場合の按分計算は、過去分返上認可の時点で、退職給付債務全体に占める代行部分の割合で計算します。なお、過去分返上認可の時点まで、費用処理額は通常の退職給付費用に含めます。


(参考)
・会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」(平成15年9月2日最終改正)

 

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