目次 I-20


20 代行部分に係る退職給付債務の会計処理


Question
 当社は3月決算会社で、厚生年金基金制度を採用しています。当期に代行部分の返上手続を行い7月に将来分支給義務免除認可を受けました。当事業年度の会計処理について詳しく説明してください。なお、当社では退職給付債務の計算は3月を基準日として計算しており、毎期7月ごろに計算結果を入手することができます。



Answer

 3月決算の会社の場合、3月末時点の退職給付債務の計算結果を決算手続中に入手することは困難です。そこで、決算日前1年以内の日を基準日として計算した退職給付債務の計算結果を転がし計算を行って算定します。3月を基準日として計算する場合は、前期末の計算結果を転がし計算します。


(1) 将来分支給義務免除認可の日

 7月時点の将来分支給義務免除の前後の計算は、前期3月末を基準日として、7月末時点での将来分支給義務免除前と将来分支給義務免除後の退職給付債務の計算を信託銀行等に依頼します。この免除前と免除後の退職給付債務の差額を過去勤務債務として認識し、認可日の属する月から決算期末までの月数分を、会社の採用する過去勤務債務の費用処理方法により費用処理します。

 将来分支給義務免除の時点では仕訳は生じません。

 なお、過去勤務債務の費用処理方法を、当期以前において選択している場合は、継続性の原則により、同じ費用処理方法(具体的には処理年数)により会計処理する必要があります。初めて過去勤務債務を認識した場合は、平均残存勤務期間以内の一定の年数を決定して、当該年数で按分した額を毎期費用処理する必要があります。


(2) 過去分返上認可を受けた日

 この時点で、過去分について国への返還相当額(最低責任準備金)が確定します。過去分返上の認可の直前の代行部分に係る退職給付債務を、国への返還相当額まで修正し、その修正額を損益に計上します。また、この時点での未認識会計基準変更時差異、未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異の未処理額のうち、代行部分に対応する金額を損益に計上します。

 仕訳は、(借方)退職給付引当金/(貸方)代行返上益、あるいは(借方)代行返上損/(貸方)退職給付引当金、となります。代行返上益あるいは代行返上損は、原則として特別損益となります。


(3) 返還の日

 返還の日において、(2)により修正された退職給付債務と実際返還額の差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上します。

 仕訳は、(借方)退職給付引当金/(貸方)代行返上益、あるいは(借方)代行返上損/(貸方)退職給付引当金、となります。代行返上益あるいは代行返上損は、原則として特別損益となります。


(参考)
・会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」(平成15年9月2日最終報告)

 

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