目次 I-18


 2 厚生年金基金の代行返上、解散と他の年金制度への移行の会計処理


18 厚生年金基金の代行部分の返上をするときの原則法による会計処理


Question
 当社は、厚生年金基金制度の代行返上を計画しています。代行返上をした場合、巨額の代行返上益が計上されるとのことですが、どのように会計処理をするのでしょうか。



Answer

 確定給付企業年金法(平成13年法律第50号、平成14年4月1日施行)に基づき厚生年金基金を確定給付型企業年金へ移行し、厚生年金基金の代行部分を返上した場合の会計処理は、次のとおりです。代行返上は厚生労働省の認可事項なので、申請の準備段階から最終の過去分返還の日まで1年以上を要します。この間、権利義務に変更が生ずるそれぞれの時点で会計処理が生じますが、これを時系列にそって列挙しますと、下記のとおりです。

(1)将来分支給義務免除認可の申請日―─ 会計処理は生じません。

(2)将来分支給義務免除の認可の日――─ 将来分支給義務免除により消滅した退職給付債務を過去勤務債務として認識します。

(3)代行部分過去分返上の認可の申請日─ 会計処理は生じません。

(4)代行部分過去分返上の認可の日─── (イ)  過去分返上認可の直前の代行部分に係る退職給付債務を国への返還相当額(最低責任準備金)まで修正し、その差額を損益に計上します。
  (ロ)  未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異の未処理額のうち、過去分返上認可の日における代行部分に対応する金額を損益に計上します。

(5)代行部分返還の日───────── 返還の日において、過去分返上認可により修正された退職給付債務と実際返還額との間に差額が生じた場合には、原則として、当該差額を損益に計上します。

 上記の(2)の将来分支給義務免除の認可の日には、過去勤務債務が認識されますので、(2)が帰属する事業年度における損益への影響額は、当該過去勤務債務のうちの認可の日から決算日までの間の償却費となります。当該過去勤務債務を一時償却している場合は、その全額が認可の日の属する事業年度の損益に計上されます。

 上記(4)の(イ)、(ロ)により認識された損益は、代行返上という特別な同一事象に伴って生じたものであるため、特別損益に純額で表示します。なお、(4)の日と(5)の日が同一事業年度に属するときは、(5)もこの特別損益に含めます。


(参考)
・会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」(平成15年9月2日最終改正)

 

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