目次 I-5


5 退職給付債務の増額又は減額


Question
 当社では、経営改善の一環として退職給付制度を改革しますが、労使の合意を得て、給付減額を行う予定です。この場合の退職給付会計への影響について説明してください。



Answer

(1) 退職給付債務の増額又は減額の発生

 退職給付制度間の移行又は制度の改訂により、退職給付債務が増加又は減少する場合には、その増加額又は減少額を過去勤務債務として認識します。過去勤務債務の測定は、移行前と移行後あるいは制度改訂前と制度改訂後の退職給付債務を測定し、その差額により行います。

 移行に当たり複数の退職給付制度を集約し、一つの退職給付制度に移行するケースがあります。この場合には、移行前の各退職給付制度の終了する部分の退職給付債務を計算して合算し、一方で移行後の退職給付債務を計算して、その合算値と計算額との差額を過去勤務債務として認識します。

 また、一つあるいは複数の退職給付制度から複数の退職給付制度に移行するケースもあります。移行前の退職給付制度と移行後の退職給付制度の対応関係が明らかでない場合には、まず、移行後の各退職給付制度の退職給付債務の比率で、移行前の各退職給付制度の退職給付債務の合算値を按分して、移行後の退職給付制度に対応する移行前の退職給付債務を計算します。次に、その計算額と移行後のそれぞれの退職給付制度の退職給付債務との差額を、それぞれの退職給付制度の過去勤務債務として認識する方法が適切と考えます。


(2) 退職給付債務の増額又は減額の測定時点

 過去勤務債務は、規程等の改訂に伴い退職給付水準が変更された結果生じるものです。したがって、その認識時点は、原則としてその原因となる規程等の改訂日となります。しかし、決算日が改訂日から大きく離れていないなど、それぞれの認識時点で退職給付計算をしなくても重要な差異が発生しないと考えられる場合には、決算日現在で退職給付計算を行うことも許容されると考えられます。

 

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