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当社では退職給付制度改革により、確定拠出型退職年金制度の導入を検討しています。この場合、現行の確定給付型の退職給付制度は終了の処理が必要と聞いています。そこで、退職給付制度の終了の会計処理について詳しく説明してください。 |
(1) 退職給付制度の終了の会計処理
退職給付制度の終了がある場合には、当該退職給付債務が消滅すると考えて、退職給付債務の消滅処理を行います。さらに、消滅時点における未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異(以下、これらの項目を「遅延処理項目」といいます。)の未処理額のうち、退職給付債務の消滅部分に対応する金額を損益として認識します。(適用指針10(2)(3))
(1) 退職給付債務の消滅
次の手順で、金額計算を行います。
(a) 終了した部分の退職給付債務の計算
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終了した部分に係る
退職給付債務 |
= |
終了前の計算基礎に基づいて
数理計算した退職給付債務 |
− |
終了後の計算基礎に基づいて
数理計算した退職給付債務 |
(b) |
損益の認識
終了した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額の支払等の額との差額を、損益として認識します。 |
(2) 遅延処理項目の未処理額の処理(適用指針30)
(a) |
終了部分に対応する金額の算定
終了時点の遅延処理項目の未処理額のうち、終了部分に対応する金額を計算します。対応する部分の計算は、退職給付債務比率その他の合理的な方法により算定します。
具体的には、遅延処理項目の未処理額の発生原因を分析し、終了部分に個別対応する部分は終了部分に対応する部分に含め、原因別の対応額を特定することが困難な部分については、退職給付債務比率により按分して終了部分に対応する部分を計算します。
また、年金資産を退職給付制度の終了前において公正な評価額により計算し、終了直前の予測額との差額は未認識数理計算上の差異として把握します。この未認識数理計算上の差異についても、上記の按分の対象とする未認識数理計算上の差異に含めます。
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(b) |
損益の認識
終了部分に対応する遅延処理項目を損益として認識します。遅延処理項目は退職給付引当金として計上すべき部分(プラス又はマイナス)について未だ計上していない部分なので、その遅延処理項目を消滅させるということは、退職給付引当金を相手勘定とする引当金の計上又は取崩しの会計処理となります。 |
(2) 終了の会計処理の考え方のポイント
終了は金融負債の消滅の認識です。金融負債の消滅の認識時点は、契約上の義務が消滅する時点です。退職給付制度の終了は、退職金規程の廃止や厚生年金基金制度の解約等により退職給付を支給するという契約上の債務が消滅することを意味します。退職給付制度改革においては、従業員の退職金の既得権部分について、残余財産の分配あるいはその後の退職給付制度への移行などにより、何らかの保障をしなければ労使の合意が得られません。
したがって、従業員の既得権(過去期間分)あるいは期待権(将来期間分)を企業がどのように保障したのかに着目して、終了の認識を検討するのが適切です。 |