目次 VIII-1


VIII.組織再編に係る国際税務


1 三角合併とその適格要件の留意点

ポイント
 ・ 三角合併では、被合併会社の株主に対して合併会社の株式ではなく、親会社の株式を交付することになります。
 ・ 三角合併の適格要件では、他の合併の場合の適格要件の他に、合併会社とその親会社との間に完全支配関係があることが要件となります。
 ・ 軽課税国に所在する外国親法人の株式を合併の対価とする三角合併において、合併会社と被合併会社との間に特定支配関係があるときは、その三角合併は適格合併の範囲から除かれます。


1 三角合併解禁の経緯

 グローバリゼーションが急速に進み、クロスボーダーのM&Aが世界各地で繰り広げられるようになる中、合併等対価の柔軟化の一貫として親会社株式を合併対価とする三角合併が解禁されました。三角合併の手法を使うことにより外国企業が現金なしで(自社の株式を対価にして)日本企業を買収できるようになったため、主に外国企業にM&Aの門戸を開いた改正であるといえます。

 当初、三角合併の解禁は、会社法が施行された平成18年からスタートする予定でしたが、ライブドアによるニッポン放送株式の取得事件等により産業界が買収に危機を募らせ、買収防衛策検討のための猶予期間1年間が設けられました。そして、平成19年より解禁しています。


2 三角合併とは

 合併の対価として株式のみが交付される場合、一般的には被合併会社(消滅会社)の株主に対して合併会社(存続会社)の株式を交付することになりますが、三角合併の場合には、合併会社の株式に代えて合併会社の親会社の株式を交付することになります。


 上記の図を用いて説明すると、甲社と乙社が合併する際に、甲社は乙社の株主に対し、合併の対価として自社の株式に代えて親会社の株式を交付することになります。


3 適格合併の範囲に関する特例

 クロスボーダーの三角合併では、軽課税国に所在する実態のない親会社を利用して三角合併を行うことにより、タックス・ヘイブン対策税制の適用を免れるという組織再編成等が出てくる可能性があります。

 そのような国際的租税回避を目的とした組織再編成を防止するため、軽課税国に所在する外国親法人の株式を合併の対価とする三角合併において、合併会社と被合併会社との間に特定支配関係(発行済株式の50%超を直接または間接に保有する関係)があるときは、その三角合併は適格合併に該当しないこととされ、課税の繰り延べをしないこととされているのです。

 

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