目次 VII


VII.過少資本税制

ポイント
 ・ 過少資本税制とは、親会社からの借入金が親会社からの出資金に比較して多額の場合に、その借入金について支払う負債利子の一部を損金算入することを制限するために設けられた制度です。


1 制度が導入された経緯

 法人(外資系企業などの外国法人の子会社)が外国親会社から資金調達を行う場合には、出資により調達する方法と借入金により調達する方法があります。出資により調達した場合には、その出資の見返りとして親会社に対し配当金を支払いますが、借入金として調達した場合には、その見返りとして利息を支払うことになります。見返りとして同額を支払った場合でも、配当は損金の額に算入できませんが、利息は損金の額に算入することができます。

 このように出資による調達と借入による調達では、資金調達という効果は同じでも、見返りである対価の支払いという面では、所得計算上の差異が生じます。したがって、租税負担の軽減を図る目的から、出資による調達を著しく制限し、ほとんどの資金を借入により調達するという租税回避行為が行われるようになりました。

 このような租税回避行為を防止するために、わが国では平成4年に「過少資本税制」が導入されました。


2 内 容

 内国法人が、各事業年度において、国外支配株主等または資金供与者等に借入利息等を支払う場合において、その国外支配株主等または資金供与者等の貸付残高がその国外支配株主等の資本持分の3倍を超えるときは、その超える部分に対応する借入利息等は損金不算入となります(措法66の5丸数字1)。

(1) 損金不算入額

 内国法人に係る国外支配株主等や資金供与者等からの借入金のうち、国外支配株主等の資本持分の3倍を超える部分に対応するこれらの者の利子保証料等のうち、一定の算式で計算した金額を損金不算入とします(具体的計算方法は『図解とポイント解説ですっきりわかる [最新] 国際税務ABC』(辻・本郷税理士法人 編著)VII−5を参照して下さい)。

(2) 負債利子の範囲

 「負債利子」とは、国外支配株主等に対する利子、割引料、保証料その他経済的性質が利子に準ずる一定のものをいいます。

(3) 国外支配株主等の意義

 「国外支配株主等」とは、非居住者等で内国法人との間に次に掲げる関係がある者をいいます(措法66の5丸数字4一)。

 a 内国法人の発行済株式等の50%以上を直接または間接に保有する関係

 b  内国法人と外国法人が同一の者によって、それぞれその発行済株式等の50%以上を直接または間接に保有される関係

(4) 資金供与者等の意義

 「資金供与者等」とは、内国法人に資金を供与する者及びその資金の供与に関係のある者をいいます(措法66の5丸数字4二)。
(例:国外支配株主等から第三者を通じて内国法人に資金供与をした場合のその第三者)

(5) 平均負債残高

 期末残高ではなく、期中残高を平均した数値です。

 

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