目次 IV-2


2 外国法人に対する課税

ポイント
 ・ 国内源泉所得を有する外国法人は、法人税を納める義務があります。
 ・ 外国法人に対する課税は、恒久的施設(PE)の有無と国内源泉所得の種類に応じて異なります。
 ・ 外国法人の各事業年度の所得の計算については、内国法人の規定が準用されますが、税額控除の適用については、一部制限があります。


1 概 要

 外国法人は、各事業年度の所得のうち、国内源泉所得について、法人税を納める義務があります(法法4)。

 そして、外国法人の日本国内における課税関係は、恒久的施設(PE)の有無と国内源泉所得の種類に応じて、以下のとおり定められています(法基通20−2−12)。

 なお、外国法人である公益法人等、または人格のない社団等については、国内源泉所得のうち、収益事業から生ずるものについて法人税を納める義務があります(法法4)。


2 各事業年度の所得計算上の留意点

 外国法人の各事業年度の所得の計算は、内国法人の各事業年度の所得の計算に準じて行います(法法142)。

 ただし、以下の点に留意が必要です。

(1) 販売費、一般管理費その他の費用の配賦(法令188丸数字1一)

 法人税法22条3項二号に規定する販売費、一般管理費その他の費用は、外国法人の各事業年度の販売費、一般管理費その他の費用のうち、その外国法人の国内源泉所得に係る収入金額、もしくは経費、または固定資産の価額等の合理的な基準を用いて、その国内業務に係るものとして配分されたものに限られます。

 また、法人税法22条3項三号の損失は、国内業務に係るもの、または国内にある資産につき生じたものに限られます。

 なお、販売費、一般管理費その他の費用を国内業務に係るものと国外業務に係るものとに区分する際に、個々の費目ごとに区分することが困難であるときは、原則として、すべての共通費用を一括して、その事業年度の国内業務に係る売上総利益金額と、国外業務に係る売上総利益金額の比で区分します(法基通20−3−5、16−3−12)。

(2) 受取配当金の益金不算入(法令188丸数字1二)

 受取配当金の益金不算入額を計算する際の負債利子の額は、国内業務に係る負債利子に限ります。

(3) 棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価方法(法令188丸数字1三)

 棚卸資産は、外国法人が所有する棚卸資産のうち、国内にあるものに限ります。

(4) 減価償却資産の償却費の計算及びその償却方法(法令188丸数字1四)

 減価償却資産は、外国法人が所有する減価償却資産のうち、国内にあるものに限ります。

(5) 繰延資産の償却費の計算及びその償却方法(法令188丸数字1五)

 繰延資産は、外国法人の繰延資産のうち、国内業務に帰せられるもの、または国内にある資産に係るものに限られます。

(6) 資産の評価損の損金不算入等(法令188丸数字1六)

 資産の評価損の損金不算入等の規定の対象となる資産は、国内にある資産に限られます。

(7) 役員給与の損金不算入(法令188丸数字1七)

 役員給与の損金不算入の規定中の使用人は、外国法人の使用人のうち、その外国法人の国内業務のために、国内において常時勤務する者に限られます。

(8) 寄附金の損金不算入(法令188丸数字1八)

 寄附金の損金不算入額を計算する際の資本金等の額は、外国法人の資本金等の額にその外国法人の総資産の価額のうちに国内にある総資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とします。

 また、寄附金の損金不算入額を計算する際の所得の金額は、国内源泉所得の金額とします。

(9) 法人税額等の損金不算入(法令188丸数字1九)

 法人税額等の損金不算入の規定中の法人税等には、外国またはその地方公共団体により課される法人税等を含みます。


3 税 率

 外国法人である普通法人、または人格のない社団等に対する法人税の税率は、内国法人に対する税率と同様30%です。

 ただし、普通法人のうち、各事業年度終了時の資本金の額、もしくは出資金の額が1億円以下のもの、または人格のない社団等の国内源泉所得については、年800万円以下の部分は、税率が22%になります(法法143)(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する事業年度については、22%ではなく18%になります)。

 なお、外国法人の資本金の額、または出資金の額が1億円以下であるか否かの判定は、各事業年度終了の日の電信売買相場の仲値(TTM)により円換算した金額を基に行うものとします(法基通20−3−14)。


4 税額控除

(1) 所得税額控除

 所得税額控除の規定は、外国法人の法人税の課税標準に算入された国内源泉所得について納付した所得税について適用されます(法法144)。

(2) 外国税額控除

  外国法人については、外国税額控除の適用はありません(法基通20−4−2)。


5 納税管理人の届出

 法人が日本国内に本店または主たる事務所を有せず、もしくは有しないこととなる場合において、その法人が確定申告書の提出等をする必要があるときは、その処理をさせるため、日本国内に住所または居所を有する者を、納税管理人として定めなければなりません(通則法117)。

 なお、確定申告書を提出すべき外国法人が、事業年度の中途において国内業務のすべてを廃止した場合には、その事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日の前日と、その国内業務を廃止した日のいずれか早い日までに確定申告書を提出する必要がありますが(法法145)、その外国法人が国内業務を廃止した日までに納税管理人の届出をすれば、確定申告書の提出期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日の前日となります。


6 国内業務を廃止した場合の事業税の特例

 外国法人が国内業務の全部を廃止した場合には、その廃止した日の属する事業年度の所得に課される事業税は、その国内業務を廃止した日の属する事業年度の損金に算入することができます(法基通20−3−8)。


7 青色申告

 青色申告の規定は、外国法人が提出する確定申告書及び中間申告書ならびにこれらの申告書に係る修正申告書について準用します(法法146)。

 

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