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II.租税条約 |
1 租税条約の概要 |
・ | 適用対象者は締約国の居住者です。 |
・ | 対象税目は、原則として所得税、法人税及び住民税です。 |
・ | 国際的な二重課税を排除する等の目的があります。 |
1 租税条約の正式名称 租税条約は、正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と○○国との間の条約」といいます。 「所得」に対する租税としては、日本の場合には所得税と法人税が該当します。しかし、必ずしもその2つだけが対象になるのではなく、例えば日中租税条約のように、地方税(住民税)が含まれる場合もあります。 租税条約は第一次世界大戦後、ヨーロッパを中心に発展してきたといわれています。日本は昭和30年に初めて租税条約(日米租税条約)を締結しました。I−2でも触れたように、現在では45か国との間で締結され、56か国との間で適用されています(平成21年4月現在)。 2 租税条約の適用対象者 租税条約のメリットを享受できるのは、締約国の居住者に限られます。したがって、締約国ではない第三国の居住者がその締約国間の租税条約によるメリットを享受することはできません。 なお、租税条約における「居住者」とは日本の国内法のそれとは異なり、法人も含んだ概念となります。 したがって、居住者・非居住者、内国法人・外国法人といった概念の整理が必要になりますし、最近の経済活動のグローバル化に伴って複雑化している実務に対応するためにも、きちんとした概念の理解が必要になります。これらの概念については、I−3を確認して下さい。 3 租税条約の対象税目 日本が締結している租税条約では、原則として所得税、法人税及び住民税をその対象としています。 ただし、相手国によっては地方税を含めない場合もあります。これは、例えば米国のように州が独自に課税を行う場合において、国(連邦政府)としてその課税を制限することができないとされているようなケースがあるためです。 4 租税条約の目的 (1) 国際的二重課税の排除 租税条約の一番の目的は、国際的な二重課税を排除することといっても過言ではありません。 経済活動がグローバル化していくと取引が国を越えて行われるため、それぞれの国で所得が生ずる可能性があります。それぞれの国には課税権があり、同じ所得に対してそれぞれの国で課税を受けるケースが出てきます。いわゆる「二重課税」です。二重課税の状態が排除されなければ、納税者の国際的な経済活動を停滞させてしまうことになりかねません。 そこで、そのような国際的な二重課税を排除することが租税条約の大きな目的の一つとなっているわけです。 (2) 国際的な脱税及び租税回避の防止 グローバルな脱税・租税回避スキームに対しては、国内法のみで対処することは困難であり、租税条約に基づき各国が協力して対処していく必要があります。 (3) 各国税務当局間の協力体制の確立 グローバルな事案に対しては、各国税務当局がいろいろな形で連携していくことが必要になることがあります。 例えば、第V章で説明する移転価格税制によって追徴課税を受けた場合において、その後2国間の相互協議により二重課税を排除しようとするとき、両国の協力体制が確立されていなければスムーズな協議が行えず、結果として納税者の国際的な経済活動を妨げてしまう可能性があります。 (4) その他 租税条約の目的は上記(1)〜(3)に限られたものではなく、例えば締約国間の課税権の配分などもその目的の一つと考えられます。 具体的には、租税条約ではある所得について、その所得が生じた国(源泉地国)とその所得を受領する者が所在する国(居住地国)のいずれの国において課税することができるのかが定められています。 両方の国での課税権が認められている場合もありますし(その場合には外国税額控除等により、二重課税を排除することになります)、一方の国にのみ課税権を認め、二重課税を排除している場合もあります。 このように、課税権の配分を行うことも租税条約の目的の一つと考えられます。 |