目次 I-1


I.国際税務の基礎知識


1 国際税務とは

ポイント
 ・ ヒトやモノの移動に伴って所得等が国境を越える場合に、その所得等に対して2か国以上の課税主体が登場すると、国際税務の問題が生じます。
 ・ 複数国間の税務問題に対処することが、国際税務の役割です。


1 国際税務とは

 近年、グローバリゼーションという言葉をよく耳にするようになりました。経済のグローバル化も例外ではなく、中小企業の海外進出や国境を越えた取引が行われることもめずらしいことではなくなりました。

 その一方、各国にはそれぞれ課税権があり、また自国の税法はそれぞれの国が独自に定めていますので、国境を越えた取引が行われる場合には、その取引から生じた所得がどちらの国で課税されるのか、はたまた両国で課税され二重課税となってしまうのか等、国際間の税務問題が生じます。

 国際税務という言葉の明確な定義はありませんが、そのような2国間以上の税務問題を扱う分野が「国際税務」であり、自国の税法及び相手国の税法ならびに租税条約等を勘案してこれに対処することになります。


2 国際税務の範囲に含まれる取引

 では、どのような取引が国際税務の範囲に含まれるのか、具体例を用いて説明しましょう。

〈ケース(1):中国企業が中国国内で事業活動を行う場合〉

 この場合、中国企業が中国国内で事業活動を行っているだけですので、中国の国内税務の分野であり、国際税務の守備範囲ではありません。

 外国の税務=国際税務ではなく、あくまで複数の課税主体が登場して初めて国際税務の分野となります。

 

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