目次 Q1


Question
 会社計算規則による会計処理のポイント
 会社法に基づく会計処理を行う際のポイントについて教えてください。

Answer
ポイント (1) 会計処理について、会社法は会社計算規則に委任しています。
(2) 会社計算規則においては、資産および負債の評価について個別の評価規定を設けることはせず通則規定のみを定めています。
(3) 具体的な会計処理については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌することになります。


 会社計算規則における資産および負債の評価に関する通則

 資産および負債の評価は、会社計算規則第5条および第6条にその評価方法が規定されています。しかし、これらは通則的な規定であり、具体的な会計処理については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌することになります(会431、計規3)。


 資産の評価規定

 資産については、会社計算規則第5条にその評価方法が規定されています。その概要を一覧表の形にまとめてみますと次のとおりです。


取得原価主義  資産については、会社計算規則または会社法以外の法令に別段の定めがある場合を除いて、会計帳簿にその取得価額を付さなければなりません(計規5丸数字1)。
相当の償却  償却資産については、相当の償却をしなければなりません(計規5丸数字2)。なお、償却資産とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行によって償却が必要とされる資産であり、土地等の非償却資産は含まれません。
強制評価減  事業年度の末日における時価が取得原価より著しく低い資産で、その時価が取得原価まで回復すると認められないものについては、時価による評価が必要となります(計規5丸数字3一)。いわゆる強制評価減といわれる手続きです。
減損損失  事業年度の末日において予測することができない減損が生じた資産または減損損失を認識すべき資産については、その時の取得原価から相当の減額をした額を付すことが求められます(計規5丸数字3二)。いわゆる減損会計の適用を求めたものです。
取立不能
見込額の控除
 取立不能のおそれのある債権については、貸倒引当金を設定するなどの方法によって、取り立てることができないと見込まれる額を控除しなければならないとされています(計規5丸数字4)。
償却原価法  債権について、取得価額が債権金額と異なる場合に、いわゆる償却原価法(金融商品会計基準14)を適用することを容認しています(計規5丸数字5)。
低価法
時価法
 一定の資産については、事業年度の末日においてその時の時価または適正な価格を付すことができます(計規5丸数字6)。


 負債の評価規定

 負債については、会社法または会社計算規則以外の法令に別段の定めがある場合を除いて会計帳簿に債務額を付さなければなりません(計規6丸数字1)。

 しかし、次に掲げる負債については、事業年度の末日においてその時の時価または適正な価格を付すことができます(計規6丸数字2)。

負債項目 内   容
引当金  退職給付引当金、返品調整引当金のほか将来の費用または損失の発生に備えて、その事業年度の負担に属する合理的な金額を見積もった上で費用または損失として繰り入れることにより計上が求められます。
社 債  払込みを受けた金額が債務額と異なる社債については、債務額ではなく、適正な価格を付す必要があります。なお、償却原価法(注)は容認ではなく強制であることに注意する必要があります(金融商品会計基準26但書)。
その他の負債  事業年度の末日においてその時の時価または適正な価格を付すことが適当な負債としては、たとえば、デリバティブ取引により生じる正味の債務や負ののれんが該当すると考えられます。前者は時価、後者は償却後の残高を付すことになります。
(注)  償却原価法とは、金融資産または金融負債を債権額または債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期または償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法であり、この場合、当該加減額を受取利息または支払利息に含めて処理します(金融商品会計基準IV2(注5))。

 

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