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第II部 勘定科目別の会計処理 |
第1章 流動資産 |
3.完成工事未収入金 |
(1)勘定科目の概要 完成工事未収入金は、完成工事高に計上した工事にかかる請負代金の未収額として計上されます(勘定科目分類)。 工事進行基準によれば、完成工事高に計上した期中出来高に対する未収部分が計上されます。一方、工事完成基準によった場合には、完成工事高に計上した請負金額の未収部分が計上されます。ただし、これらのうち破産債権、更生債権その他これらに準ずる債権(破産更生債権等)で決算期後1年以内に弁済を受けられないことが明らかなものは、投資その他の資産に記載しなければならないとされています(勘定科目分類)。 図表II−1−4 工事進行基準適用工事にかかる債権債務
(2)会計処理 従来は、完成工事高の認識において、工事完成基準と工事進行基準の選択適用となっていました。しかし、平成21年4月1日以後開始する事業年度から「工事契約に関する会計基準」等が導入され、原則として工事進行基準を採用しなければならなくなりました。 その結果、請け負った工事において、工事収益総額および工事原価総額ならびに決算日における工事進捗度について信頼性をもって見積もることができる場合には、工事進行基準を適用することとなり、見積もることができない場合には、工事完成基準を適用することとなります。 ここで、工事進行基準によった場合には、毎決算日ごとに工事進捗度に応じた完成工事高が期中完成分として計上されることとなります。完成工事未収入金は、期中完成分のうち既受領額である未成工事受入金(第II部第6章「9.未成工事受入金」参照)との差額を計上することとなります。 一方、工事完成基準においては、竣工引渡しが完了した時点で完成工事高を計上します。完成工事未収入金は、工事価格と既受領額である未成工事受入金との差額を計上することとなります。 また、JV(共同企業体)工事においては、請負総額に対して、出資持分割合を乗じた額が完成工事未収入金の計上額となります。 なお、完成工事未収入金の回収状況等は、資金繰りの関係からも重要であるため、個別工事ごとならびに得意先一覧等により、回収条件・回収状況等の管理が必要となります。 【事例II−1−8】完成工事未収入金の計上(1)
【事例II−1−9】完成工事未収入金の計上(2)
(3)税務処理 法人税法においては、従来、長期大規模工事として工事期間が2年以上、請負対価の額が50億円以上に該当する工事が工事進行基準の対象でした。しかしながら平成20年度の税制改正にともない、長期大規模工事の対象は工事期間が1年以上、請負対価の額が10億円以上と改定されました。また、従来は損失が生じると見込まれる工事には適用できませんでしたが、適用可能となりました(法法64、法令129)。 なお、JV工事については、請負契約上の請負金額で判断するのではなく、各構成員の出資比率を乗じた金額で判断することとなります。 また、工事進行基準に基づいて計上された完成工事未収入金は、売掛債権等に該当するとされたため、貸倒引当金および貸倒損失の対象とすることができるようになりました(法令130)。 一方、消費税については、工事進行基準により完成工事高を計上した部分に関して、その課税期間に資産の譲渡等を行ったものと取り扱いますが、実際に工事を引き渡したとき(竣工時)を基準として申告することも認められています(消法16・17、消基通9−3−1・9−4−1)。 |