目次 第3章 第1節 1−(3)


1.解散事業年度の税務

(3) 欠損金の繰戻し還付

A 取扱い

 法人税の課税所得計算は、事業年度単位課税をとっている。しかし、納税者である法人は、毎事業年度定額の所得金額を算出するわけでなく、市場の状況又は経営戦略等により、ある事業年度によっては著しく大きい課税所得が発生し、また、ある事業年度においては欠損が発生することも考えられる。そのために、事業年度単位課税の救済措置として、欠損金の繰越控除及び欠損金の繰戻し還付制度がある。

 欠損金の繰戻し還付制度は、原則として平成24年3月31日までに終了する事業年度においては、以下の「中小企業者等」を除き停止されている(租税特別措置法66条の13)。

 ・ 普通法人のうち、その事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社の100%子法人等を除く)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社及び外国相互会社を除く)

 ・ 公益法人等又は協同組合等

 ・ 法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる次の法人
 認可地縁団体、管理組合法人、団地管理組合法人、法人である政党等、防災街区整備事業組合、特定非営利活動法人及びマンション建替組合

 ・ 人格のない社団等

 しかし、法人が解散した場合には、特例として繰戻し還付制度が適用できることとなる。具体的には、法人が解散した場合において、解散の日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は解散の日の属する事業年度(以下「欠損事業年度」という)において欠損金額が生じており、その欠損金額の生じた事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度(以下「還付所得事業年度」という)において法人税額が発生している場合には、還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度について、連続して青色申告書である確定申告書を提出している場合に限り、以下の金額の還付請求をすることができる(法人税法80条1項1号、4号)。

 なお、この制度は、清算所得課税を行っていた従来から存在するものであり、改正後においても同様の取扱いとなっている。

【事業年度の例】 (3月決算法人が平成22年12月31日に解散し、平成24年5月31日に残余財産が確定した場合)

 なお、仮に中小企業者等に該当しない法人が解散した場合でも、当該規定は適用できることとなる。従って、資本金の額5億円以上の法人の100%子法人が解散した場合にも、当然のことながら当該規定は適用されることに留意が必要である。


B 欠損金の繰戻しによる還付請求書

 当該欠損金の繰戻し還付制度の適用は、納税者の判断により選択適用できるものであるため、納税者である解散した法人から「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を所轄税務署長に提出することとなる。

 解散によりこの還付請求書を提出する場合、その事実の発生年月日及びその事実の詳細を記載した書類を添付しなければならない(法人税法施行規則36条の4第5号)。

 従って、当該請求書に解散の事実が記載された全部事項証明書を添付して提出することとなる。


C 欠損金の繰戻しによる還付請求書の提出期限

 欠損金の繰戻しによる還付請求書の提出期限は、解散の日から1年以内である(法人税法80条4項)。


D 地方税の取扱い

 欠損金の繰戻し還付制度は、法人税法のみにおいて適用されるものであり、道府県民税、市町村民税及び事業税にはこのような規定はない。

 従って、当該欠損金の繰戻し還付を適用した場合、その後の法人税と道府県民税、市町村民税及び事業税とにおいて、繰越欠損金額にずれが生じることとなる。

 

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