目次 Q3


Question
 会社の解散と事業年度
 株式会社が解散した場合および清算中の会社が継続した場合には、税務上「みなし事業年度」という考え方により、事業年度が変わることがあると聞きましたが、この点について具体的に教えてください。

Answer 解説

 1 会社が解散した場合のみなし事業年度

 会社の事業年度は、定款に定められた会計期間によることとされていますが(法法13丸数字1)、会社が事業年度の中途において解散した場合には、税務上、事業年度をどのように捉えるのかが問題になります。

 この点、株式会社の場合には、事業年度開始の日から解散の日までを1事業年度とみなし、その後は、解散の日の翌日から1年ごとの期間を事業年度とすることになりますので注意が必要です。なお、持分会社や協同組合等が解散した場合には、清算中においても会社が定めた事業年度となります(法法14一)。ここでいう解散の日とは、会社の解散を決議した株主総会において解散の日を定めたときはその日とし、定めていなかったときは解散の決議があった日となります(法基通1−2−3)。

 このような、みなし事業年度の考え方が設けられているのは、課税方式が解散の前後において、所得課税方式から財産課税方式に変更されるためです。

 また、清算中の会社の残余財産が事業年度の中途において確定した場合には、その事業年度開始の日から残余財産確定の日までを1事業年度とみなします(法法14二十三)。残余財産確定の日とは、財産が現金化され、債務の弁済が完了した日のことをいいますが、実務的には清算人が常識的に判断して確定させることになります。

 次に簡単な設例によって株式会社が解散した場合の事業年度の考え方について確認してみましょう。

設例  ひかり商事株式会社(3月決算法人)は、次のようなスケジュールで清算手続きを進める予定です。

(1)  解散の日  : ×1年11月30日
(2)  残余財産確定の日  : ×3年 7月31日


回答


* 解散事業年度  → ×1年 4月 1日〜×1年11月30日
* 清算事業年度(予納)  → ×1年12月 1日〜×2年11月30日
* 清算事業年度(確定)  → ×2年12月 1日〜×3年 7月31日



  回答に示したように、解散の日までの事業年度を解散事業年度といい、清算手続開始後の事業年度を清算事業年度といいます。


 2 清算中の会社が継続した場合のみなし事業年度

 会社の継続とは、会社が解散によって清算事業年度に入った後に、その後の情勢の変化により解散前の会社に戻して事業の再開を図ることをいいます。自らが被合併会社となり、他の会社と合併することで継続させることも可能です。

 このように、清算中の会社が事業年度の中途において継続した場合にも、みなし事業年度の規定が適用されます。この場合には、事業年度開始の日から継続の日の前日までの期間および継続の日から事業年度末日までの期間をそれぞれ1事業年度とみなします(法法14二十四)。ここでいう継続の日とは、会社の継続を決議した株主総会において継続の日を定めたときはその日とし、定めていなかったときは継続の決議があった日となります(法基通1−2−3)。

 なお、清算会社は会社法に定める清算事務年度が事業年度となりますので、会社継続をするときは、改めて事業年度を定める定款変更決議をするのが通例となります。

 このようなケースについても、簡単な設例によって事業年度の考え方を確認しておきましょう。

設例  清算手続き中のひかり商事株式会社(3月決算法人)は、次のとおり清算事業年度の中途に、株主総会において会社継続の決議をしました。

(1)  解散の日  : ×1年11月30日
(2)  会社継続の決議日  : ×2年 8月 1日


回答


* 解散事業年度  → ×1年 4月 1日〜×1年11月30日
* 清算予納事業年度  → ×1年12月 1日〜×2年 7月31日
* 通常の事業年度  → ×2年 8月 1日〜×3年 3月31日



 回答に示したとおり、清算中の会社を継続させる場合には、会社の事業年度が原則どおり定款に定める会計期間に戻ることになりますので注意が必要です。

 

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