1 清算株式会社における計算書類 |
株式会社が株主総会の特別決議によって解散しますと、選任された清算人は解散日現在の財産目録と貸借対照表を作成しなければなりません(会492)。これは、清算株式会社の財産の現況を明らかにし、その後の清算手続きを首尾良く進めることによって、残余財産の分配を適切に行うために必要と考えられるからです。従来は、清算財産目録とか清算貸借対照表という呼称が用いられていましたが、会社法では特に規定されていません。もっとも、その作成方法については、会社法施行規則が詳細を定めていますので、それに従うことになります。
解散にあたって作成する計算書類 |
作成する時点 |
作成者 |
財産目録 |
解散日現在 |
清算人 |
貸借対照表 |
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2 財産目録 |
財産目録とは、積極財産(資産)と消極財産(負債)の内訳明細のことであり、清算開始時における清算株式会社の状況を示すものです。この財産目録は、資産の部・負債の部・正味資産の部の3区分に分けて表示することとされており、さらに資産の部と負債の部については、その内容を示す適当な科目に細分することとされています(会規144)。正味資産の部について指示がないのは、清算株式会社では剰余金の配当が行われないため(会509二)、資本金や剰余金を区分することには積極的な意味がないからです。
財産目録に計上する財産(資産)の評価については、原則として処分価格によることとされています(会規144)。もちろん、すべての財産(資産)について処分価格を明らかにできるとは限りませんから、その場合は取得価額のままでも構いません。清算株式会社の会計帳簿については、この財産目録に記載された価格を取得価額とみなして記帳することになりますが(会規144)、このみなし規定は、清算株式会社の貸借対照表や事務報告の作成にあたって、毎清算事務年度ごとに財産の処分価格を見積もり直すという事務負担を避ける意味があるものと考えます。
なお、財産目録のひな型を示しますと、次のとおりです。(詳細は『会社清算の実務75問75答』、Q19を参照。)
財 産 目 録
平成×年×月×日(解散日)現在
【資産の部】 |
科 目 |
摘 要 |
金 額 |
現金預金
売掛金
… |
…
…
… |
×××
×××
××× |
資産の部 合計 |
××× |
【負債の部】 |
科 目 |
摘 要 |
金 額 |
借入金
未払金
… |
…
…
… |
×××
×××
××× |
負債の部 合計 |
××× |
【正味資産の部】 |
差引 正味資産の部 |
×× |
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3 貸借対照表 |
清算開始時の財産目録が清算株式会社の財産(積極財産と消極財産)の内容を明らかにする明細表であるのに対して、清算開始時の貸借対照表は、清算株式会社の財産の構成を概括的に示す概要表ということができます。したがって、貸借対照表は財産目録に基づいて作成されることになります(会規145)。作成に際しては、資産の部・負債の部・純資産の部に区分して表示するとともに、資産の部と負債の部については、その内容を示す適当な科目に細分することとされています(会規145)。純資産の部には単に純資産という項目を設ければよいとされているのは、財産目録のところで述べたのと同様に、清算株式会社では剰余金の配当が行われないため、資本金や剰余金といった区分に積極的な意味がないからです。
ところで、この貸借対照表は、財産目録をベースにして作成されるわけですから、資産の評価については、やはり処分価格によることになります。もちろん、すべての資産について処分価格を明らかにできるとは限りませんから、その場合は財産評価の方針について注記することが求められています(会規145)。 |