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2 中小企業の会計に関する指針 |
【解 説】 1 中小企業が拠るべき会計基準 会社法では、株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うこととし(会431)、適時性と正確性のある会計帳簿の作成を義務付けています(会432)。 これまで会計基準は、大企業向けであったため、中小企業の拠るべき会計基準が不明確なところがあり、中小企業でも採用可能な会計基準が求められていました。平成17年8月に公表された「中小企業の会計に関する指針(以下、会計指針)」は、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示しています。この会計指針は、公正妥当な企業会計の慣行と考えられており、会計参与が中小企業の計算書類を作成する上でも指針となります。株式会社のみならず、特例有限会社及び持分会社についても、適用することが推奨されています。 2 会計指針の特徴 会計指針は、公正妥当な会計処理の費用と便益を諮り、(1)簡便的な方法が示されている会計処理があることと、(2)一定の状況下で法人税法の定める処理を認めていることの2つを特徴とします。
3 網羅的すぎる内容 会計指針は、中小企業が利用しやすい配慮がされています。純資産の部について、企業会計基準委員会が公表した「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)に比べ、株主資本と株主資本以外の区別に重点を置き、新株式申込証拠金などの中小企業でほとんど利用されない項目を省略しています。 その一方で、会計指針は税効果会計や減損会計などの適用を求めており、従来の中小零細企業の経理実態とは異なるレベルの緻密な会計を求めています。また、組織再編で必要になる企業結合会計や企業分離会計の会計処理についても網羅的に示されています。しかしながら、税効果会計を適用した際の回収可能性の判断に関する重要な課題ついて、ほとんど示されていません。減損会計での評価問題には触れられてもいません。 網羅性がある反面、難解な会計処理については簡易に触れられているにすぎないため、逆に会計基準を参考にしなければ処理できない場面が出そうです。 |