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3 事業報告(内部統制の報告を含む)・附属明細書

Question

 会社法における事業報告、附属明細書と旧商法においての営業報告書との関係及び相違点を教えてください。

Answer

 会社法においては、用語としての「営業」はすべて「事業」と置き換えられました。事業報告は商法における営業報告書が名称変更されたと考えればわかりやすいでしょう。ただし、事業報告は営業報告書と異なり計算書類ではないとされたため、会計監査人の監査対象ではありません。



【解 説】


1 事業報告と営業報告書

 旧商法における営業報告書は、会社の活動状況に関する重要な事項を記載するものとして、計算書類に含まれていました。会社法における事業報告は、商法においての営業報告書に代わるものですが、会計に関する部分以外の記載に重点を置いていることから、計算書類ではないものと定められました。その結果、事業報告及びその附属明細書は監査役若しくは監査役会の監査対象ではあるものの、会計監査人監査の対象ではなくなりました。取締役会設置会社は、定時株主総会の招集通知の際に計算書類や事業報告を株主に提供しなければなりませんが、非取締役会設置会社では定時株主総会で提供すれば足りるとされています。

 なお、上場会社等が定時株主総会決議の通知に付している事業報告書は、会社の現状をわかりやすく解説するために自主的に作成しているものであり、会社法で定められている事業報告とは内容・性質共に異なるものです。


2 事業報告の内容

 事業報告は、次に掲げる事項をその内容とします(会施規118)。

(1) その株式会社の状況に関する重要な事項

(2)  内部統制システムに関する体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容の概要

 重要な事項としては、企業買収防衛対策として株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めている場合には、基本方針とその取組みの具体的な内容を記載することとなります。また、(a)公開会社、(b)社外役員を設けた株式会社、(c)会計参与設置会社、(d)会計監査人設置会社ごとに特則が設けられています。例えば「(a)公開会社の特則」では、現況に関する事項として、事業の譲受、会社分割などが明示されたほか、取締役、会計参与、監査役又は執行役ごとの報酬総額等の記載などが求められています。


3 附属明細書

 事業報告と計算書類のそれぞれの附属明細書は、法令上明確に区別されています。事業報告の附属明細書は、事業報告の内容を補足する重要な事項をその内容とします。公開会社の場合には、他の会社の業務執行取締役等についての兼務状況の明細や第三者との間の取引であって、株式会社と会社役員又は支配株主との利益が相反するものの明細を記載することになります。

 一方、計算書類の附属明細書は、株式会社の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表の内容を補足する重要な事項を表示しなければならないとされており、公開会社、公開会社でない株式会社にかかわらず、有形固定資産、無形固定資産、引当金、販売費及び一般管理費のそれぞれに関する明細の開示が必要です。公開会社については、このほか関連当事者との取引に関する注記が必要です(会計規145)。

 

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