目次 1-2-Q6


Question
海外駐在に当たって出国までに日本本社が行っておくべき税務上の手続

 このたび、本年8月から、当社の社員A氏を3年間の予定で海外駐在させますが、A氏が日本を出国するに当たり、日本の税務上、当社は何らかの手続をする必要があるのでしょうか。



Answer 1年以上の予定で日本を離れ、海外勤務する人は、出国の翌日から「日本の非居住者」に該当するため、出国までに「年末調整」を行う必要があります。年末調整を行うと、通常、源泉徴収された所得税が一部還付されます。


1.駐在員の年末調整の時期は?
〜必ず出国までに行うこと〜

 そもそも年末調整とは、役員や使用人に対する毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額と、その人が年間に納めるべき所得税の差額を調整するものです。(年末調整の対象になる人は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人ですが、年間2,000万円を超える給与の支払を受ける人は、年末調整の対象にはなりません。)

 ちなみにこのケースのように、年の途中で出国する場合、年末調整の対象となる給与は、図表6−1のとおり、出国する日までの給与です。

図表6−1 年の途中に非居住者になる場合の年末調整
図表6−1 年の途中に非居住者になる場合の年末調整
 (*)  出国後に支払われる給料・賞与のうち、国内源泉所得に該当するとして20.42%の税率で所得税が源泉徴収されたものは、非居住者期間に生じた所得として、この源泉徴収だけで、納税が完結するため年末調整の対象とはなりません。


2.年末調整の対象となる所得控除は?
〜人的控除については1年分、物的控除については出国する日までのものが対象〜

 社会保険料や生命保険料の控除は出国する日までに支払われたものだけに限られます。

 一方、扶養控除や配偶者控除は1年分控除できますので、通常、年末調整により源泉徴収された所得税は還付されることになります(所法191)。

 また、海外に出発する日までに、すでに総合課税の対象となる所得があるときや、出国の日以後、国内にある不動産の貸付けによる所得や国内にある資産の譲渡による所得があるときは、日本で、確定申告が必要になる場合があります。

図表6−2 年末調整の対象となる所得控除(*)
所得控除 概 要



社会保険料控除
生命保険料控除
地震保険料控除
小規模企業共済
等掛金控除
 その者が居住者であった期間内(1/1〜出国の日まで)に支払った社会保険料、生命保険料、損害保険料が控除対象になる。
なお、外国の社会保険料及び外国保険事業所が締結した生保契約のうち、国外で締結したものにかかるものは、控除対象にならない。(所法74、75、76、77)



配偶者控除
扶養控除等
出国の際の年末調整においては、出国の日の現況で判定。
(出国の際の年末調整に当たり、控除対象配偶者や扶養親族に該当するための所得要件(合計所得金額が38万円以下)を満たすかどうかは、その出国のときの現況により見積もったその年の1/1〜12/31までの合計所得金額により判定する。(所基通85−1)
 (*)  医療費控除、雑損控除、寄附金控除(特定団体に1万円以上寄附した場合)の適用を受けられる場合、年末調整ではこれらについては、計算の対象にしていないので、各自で確定申告を行う必要があります。

 

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