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3 自己信託の活用

(1)流動化・証券化による企業の財務体質の改善ができる

 企業が保有する売掛金や未収金などの債権を証券化する場合には、従来までは、その売掛債権等をまとめて信託銀行に信託し、信託銀行から取得する受益権を投資家に販売して資金化していましたが、自己信託が可能になると、売掛債権等を保有する企業が自ら受託者となって受益権を投資家に販売できるため、時間とコストの節約をしながら資金調達ができるようになります。

【流動化・証券化による企業の財務体質の改善】


   
 
【リース会社・クレジット会社の場合】



(2)不動産の流動化への活用ができる

 従来までは、不動産の原所有者(オリジネーター)が、信託会社(主に信託銀行等)に所有不動産を信託し、委託者兼受益者であるオリジネーターが受益権を販売していたのが、自己信託ができることになったことにより、オリジネーターが信託銀行等に不動産をそのまま売却し、信託銀行等がこれを自己信託し、信託銀行が受益権を販売することによって、オリジネーターの販売介入をまぬがれることができることができるようになります。



(3)一部の事業部門が自己信託で資金調達ができる

 企業が自己信託により自らの事業部門を信託し、その受益権を売却することにより、事業資金の調達が可能となります。分割や現物出資、あるいは事業譲渡と異なり、ある事業部門を自己信託(事業信託)すれば、社員等の転籍・出向は必要なく、その事業部門に関わる特許権や譲渡禁止特約条項のある物件などの問題もなく、信託 財産に移転可能となります。

 こうすることで、既存会社の有望な事業について、その有望な事業の収益力のみに応じた資金調達ができます。自社が保有する特許、商標、知的財産などを自己信託して、特許や商標などから生じる収益を基本に資金調達ができます。

【自己信託による資金調達】



(4)他社との事業連携手段としての活用ができる

 ある事業部門について他社と事業連携する場合について、その事業部門を自己信託により他の事業部門から切り離し、その受益権を連携事業先の会社に移転させることによって、その事業部門を他の事業部門のリスクから隔絶することができます。

【他社との事業連携手段】



(5)不振の事業部門のリストラ策として活用できる

 企業の不採算部門をリストラする際に、その赤字事業部門を一時的に自己信託して、その赤字事業部門の受益権を関連会社か他社に引き受けてもらい、早期に事業の再生を図り、経営が改善されたら、本体に復帰するようにできます。

【不振の事業部分のリストラ策】


  赤字部門やリストラ部門を自己信託して、その部門の収益が悪化しても本体に影響を及ぼすことはありません。

 先端技術の開発や、ベンチャー事業など新規の事業を立ち上げる際に、既存の設備や人材ではなく、新たな設備や人材などをセットにして自己信託することで本体からのリスクを回避でき、また開発をすることができます。


(6)相続対策等

 障害を抱える子や、将来不安な子のために、親が特定の財産を自己信託することによって、自己の経済的な破綻があったとしても、倒産隔離から信託財産が守られ、信託財産を子に承継することができます。

【相続対策としての自己信託】

 

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