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適格合併と非適格合併
合併については、法人税法上、被合併法人の譲渡した資産の譲渡益に対し課税しない適格合併と、譲渡益に対し課税する非適格合併に区分することができます。適格合併と呼称していますが、実際には、下記の要件を十分に検討してできるかぎり適格合併にしており、難しい場合は法人の出資金の譲渡及び役員変更で対応していることが多いです。
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適格合併の要件
適格合併とは以下のいずれかを満たす場合で、被合併法人の社員に出資持分以外の資産が交付されないものをいいます。適格合併については、同一グループ内における適格合併と共同事業を行う場合の適格合併に区分できます。なお、持分の定めのない医療法人社団及び医療法人財団については次の「[4] 共同事業を営む場合の合併」のみが適用され、この要件を満たさないかぎり非適格合併になります。
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グループ内の合併
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A |
完全支配関係がある医療法人間の合併
合併前に被合併法人と合併法人とが同一の者(個人及びその親族等)によってそれぞれの法人の出資の全部を直接または間接に保有される関係があり、合併後も当該同一のものがその出資を直接または間接に継続して保有することが見込まれている場合。
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B |
支配関係のある法人間の合併
合併前に非合併法人と合併法人とが同一の者によってそれぞれの法人の出資の50%超100%未満を直接または間接に保有される関係があり、合併後も当該同一のものがその出資を直接または間接に継続して保有することが見込まれている場合で、かつ、以下の2つの要件をいずれも満たす場合。
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a |
被合併法人の合併直前の従業員の概ね80%以上が合併法人の業務に従事することが見込まれること
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b |
合併後、被合併法人の主要な事業が合併法人で引き続き営まれることが見込まれていること
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共同事業を営む場合の合併
グループ内の合併以外で、次の5要件をすべて満たす場合。
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a |
被合併法人の被合併事業と合併事業が相互に関連するものであること
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b |
被合併事業と合併事業のそれぞれの売上金額、従業員数、被合併法人と合併法人の資本の金額が概ね5倍を超えないこと。または、合併前の、被合併法人の特定役員(経営に従事している者)のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併後の合併法人の特定役員となることが見込まれていること
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c |
被合併法人の合併直前の従業員の概ね80%以上が合併法人の業務に従事することが見込まれていること
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d |
合併後、被合併法人の主要な事業が合併法人で引き続き営まれることが見込まれていること
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e |
合併直前の被合併法人の社員のうち、合併により取得する合併法人の出資を継続して保有することが見込まれる社員が有する被合併法人の出資の合計が、被合併法人の出資総額の80%以上であること
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上記のグループ内の適格合併または共同事業を営む場合の適格合併の要件を満たさない場合の医療法人の合併については非適格合併になります。適格合併及び非適格合併の場合の課税上の相違は合併譲渡資産の譲渡益に対して課税されるかどうか及び被合併法人の繰越損失を引き継げるかどうかになります。その他適格合併の場合には合併法人は被合併法人の利益剰余金をそのまま引き継げますが、非適格合併の場合には、被合併法人の利益剰余金は合併法人の資本剰余金として引き継ぐことになります。
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合併時の課税関係
A 適格合併
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a |
被合併法人
適格合併の場合、被合併法人は資産負債を簿価で存続会社に引き継いだものとしてみなして各事業年度の所得を計算します。
そのため、被合併法人において譲渡損益は認識されません。したがって合併時に資産を再評価し、時価で譲渡する場合にはその差額が譲渡損益となりますが、税務上は簿価での譲渡とみなすためその譲渡損益は課税所得を構成せず、また譲渡損の場合でも費用として損金にも計上されません。
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b |
合併法人
適格合併の場合、合併法人は資産負債を被合併法人における簿価で引き継いだものみなして計上します。
なお、以下の要件を満たした場合には、被合併会社の繰越欠損金を合併会社に引き継ぐことができます。
・被合併会社が青色申告法人であること
・被合併会社の合併前の主要な事業が合併法人において引き続き営まれること
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被合併会社が合併後に直ちに解散することが合併の日までに社員総会で決議されていること |
・被合併会社の資産・負債のすべてを合併法人が引き継ぐこと
適格合併である時点でこれらの要件を満たしているはずですので、適格合併の場合には通常繰越損失を引き継ぐことができることになります。
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B 非適格合併
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a |
被合併法人
非適格合併の場合、被合併法人については、資産負債を時価で譲渡したものとして事業年度の所得を計算します(この場合、時価評価においては、営業権(のれん)など貸借対照表に計上されていないものも評価される)。この計算の結果生じる譲渡利益額または譲渡損失額は、被合併法人の最終事業年度の益金または損金に算入します。
非適格合併の場合には被合併会社の繰越損失を引き継ぐことができませんが、被合併法人の最終事業年度に欠損金が生じた場合には法人税の繰戻しによる還付請求ができます。
非適格合併の場合の繰越欠損金について、赤字の法人を存続法人とし、黒字の法人を消滅法人とすることが考えられます。このような合併の形態は体力のある法人を消滅させ、体力のない法人を存続させることから逆さ合併と呼ばれています。逆さ合併に合理的理由がない場合には、上記のような税務上のメリットが課税当局から否認される可能性があります。
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C 合併法人
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非適格合併の場合、合併法人についても、被合併法人の資産負債を時価で譲り受けたものとして所得の計算をします。 |