目次 第11章


第11章 医療法人設立のメリット・デメリット/新会計基準

 医療法人の設立の実務的な手続に関しては、他書に譲りますが、設立のメリット・デメリットに関して、相談者である院長に説明をしやすいように、個人開業医の場合の納税額と、医療法人を設立した場合、理事長報酬の金額を2パターン設けて比較しました。

 法人・個人を合計した納税額に、どの程度の差が生じるかに関して、院長への提案書の参考として下さい。


1.医療法人設立のメリット・デメリット 11-1

(1) 設立メリット・デメリットの比較検討

 個人で診療所を開業する場合、個人事業でスタートし、経営が軌道に乗ったころに、医療法人へ移行するのが一般的です。

 所轄する都道府県でも、老人保健施設の認可を伴う場合等を除き、開業後個人所得税の申告書を2期分提出し、かつ、設立認可申請直前年は黒字申告をしていることを、認可申請書提出の要件としている県が多くあります。必要要件として適格か否かはともかくとして、医療法人設立により法人と個人の区分経理により経営の透明性が高まる等の経営上のメリットが多く、開業後2年程度経過して順調に患者数も増加してきた段階で、医療法人の設立を検討して院長にアドバイスすることは、顧問税理士として必須の事柄です。

 医療法人の制度は、永続的な医療の提供に資することを目的として創設されたものであり、顧問税理士の先生方も、この趣旨に沿ってアドバイスすることが望まれます。

 また、メリットだけでなく、社会保険費用の増加や事務負担の増加等の点もありますので、節税効果を強調するあまり、設立動機が本来の医療法人設立の趣旨から逸脱しないように留意して下さい。

 経済的なメリットの主たる点として、累進税率を採用する所得税の最高税率より、法人税の税率の方が低い点と、個人開業時に院長の課税所得となっている金額を法人から院長への理事長報酬(給与)として支給することにより、給与所得控除の恩典を享受できる点にあります。


(以下書籍参照)

 

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