目次 第6章


第6章 事業税

1.医療機関の事業税申告における留意点 6-1

 事業税は個人または法人が行う事業に対して課される税金ですが、法人税と違い事業税は地方税ですので各都道府県によって算定の仕方に相違があります。

 特に医療法人に関しては課税所得の算定が特殊な方法であり、大別して所得配分方式と経費配分方式の2つに分類することができます。どちらの方法によるかは都道府県によって定められていますが、青森県などのように地域によっては所得配分方式・経費配分方式のどちらで計算することも認められている場合がありますので、病院・診療所の所在地の都道府県がどの方法で計算することになっているかを確認する必要があります。選択適用が可能であった場合には、計算方法によって税額に差が生じますので有利な方法で計算できます。

 なお、現在資本金1億円以上の法人については、外形標準課税が行われていますが、医療法人については外形標準課税の対象から除外されています。

 <参考>
 所得配分方式以外の都道府県
  経費配分方式のみ :山形、静岡、沖縄
  選択適用可能 :北海道、秋田、宮城、富山、大阪、広島、大分、熊本

 上記以外の都道府県については、原則として所得配分方式で申告します。


2.医療機関特有の事業税課税・非課税項目 6-2

 医療法人については事業税の課税上特別法人とされており、非課税項目や税率において優遇措置が設けられています。社会保険診療に関してはすべてが非課税となり、介護保険サービスについても一部が非課税となっています。


3.税額計算の方法 6-3

 医療法人の事業税の計算方法は所得配分方式と経費配分方式に大別できます。以下に実際の税額計算の方法を示します。


(1) 所得配分方式

 所得配分方式による事業税の計算方法はいたってシンプルです。医業所得を社会保険診療報酬とその他の収入の割合で按分するだけです。計算式としては以下の通りです。

  課税所得 総医業所得×その他の収入金額
(社会保険分の医療収入の金額+その他の収入金額)


(2) 経費配分方式

 経費配分方式による事業税の計算方法は所得配分方式に比べ合理的ですが、計算は多少手間がかかります。

  課税所得= 総医業所得−社会保険診療分の所得(A)
(A)= 社会保険診療収入−社会保険診療に係る経費(B)
(B)= 社会保険診療の専属経費+共通経費×{社会保険分の医療収入/(社会保険分の医療収入+その他の収入金額)}

 算式にすると分かりにくいのですが、内容は経費を社会保険診療に係る専属経費と全体に係る共通経費に分けた後、共通経費を収入按分して課税所得を算定していくだけです。これらによって得られた課税所得に対して税率を乗じて税額を算出します。

 なお、都道府県によっては上記の共通経費の按分をさらに以下のような計算方法で算定する場合があります。

 [1]  共通経費を医療直接費(医師の給与等)とその他の経費(事務員の給与等)に分類します。

 [2]  医療直接費とその他の経費に以下のそれぞれの按分割合を乗じて共通経費のうち社会保険診療分の金額を算出します。

(按分割合)

・医療直接費
  社会保険診療報酬の金額/(社会保険診療報酬の金額+その他の診療報酬の金額)

・その他の経費
  社会保険診療報酬の金額/(社会保険診療報酬の金額+その他の診療報酬の金額+その他の付随収入)

 医療法人は法人税においては普通法人扱いですが、事業税の課税上においては特別法人とされているため普通法人に比べ税率において優遇されています。具体的な税率は次の通りです。

   事業税の税率: 課税所得年400万円以下   5%
    課税所得年400万円超及び清算所得   6.6%

  (普通法人については400万円以下5%、400〜800万円7.3%、800万円超9.6%)
(上記の税率は標準税率の場合で、地方税については各都道府県によって標準税率以外の税率を定めることもできる)

 ただし、出資金額が1,000万円以上の医療法人であり、かつ3以上の都道府県にわたり事業を行う医療法人については、400万円以下の所得についても6.6%で課税されます。


4.所得配分方式と経費配分方式 6-4

 所得配分方式で計算した方が有利になることが多いのですが、共通経費が大きい場合には経費配分方式の方が税額が少なくなる場合もあります。形式的な基準でどちらが有利かを決めるのは難しいため、選択できる場合には実際に税額を計算して有利な方を決めれば良いでしょう。

 

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