第7章 |
第7章 相続税/贈与税 |
相続税とは、死亡による財産の移転により課される税をいいます。 贈与税とは、個人間における財産の移転により課される税をいい、相続税の補完的な性格を有しているといえます。 (1) 納税義務者 次に掲げる者は相続税または贈与税を納める義務があります。
(2) 申告期限
(3) 納付 期限内申告書を提出した者は、これらの申告書の提出期限までに、これらの申告書に記載した相続税額または贈与税額に相当する相続税または贈与税を国に納付しなければなりません。 (4) 物納及び延納 相続税及び贈与税は金銭一時納付が原則ですが、納付税額が巨額になることや取得資産が金銭以外の資産の占める割合が大きいことなどから、金銭で一時に納付することを困難とする事由が考えられるため、一定の要件により延納及び物納を認めています。 延納は、納税義務者の申請により納付を困難とする金額を限度として税務署長が許可することができるものです。 物納は、延納によっても金銭で納付することを困難とする場合に納税義務者の申請によってその納付を困難とする金額を限度として税務署長が許可することができるものです。なお、物納は相続税についてのみ適用されるものです。 (5) 延納中に延納困難となった場合に物納を認める制度の創設 従来は、一度延納を選択すると物納に変更することは認められていませんでしたが、平成18年の改正により相続税を延納中の者が、資力の状況の変化等により延納による納付が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納税額からその納期限の到来した分納税額を控除した残額を限度とし、物納を選択することができます。 この場合の物納財産の収納価額は、その物納に係る申請時の価額とします。ただし、税務署長は、収納時までにその物納財産の状況に著しい変化を生じたときは、収納時の現況によりその物納財産の収納価額を定めることができることとなりました。 (6) 物納制度の改正
(7) 物納費用の負担者 物納を行うためには、別途費用が必要となりますが、物納費用は納税者である物納申請者つまり、個人の負担となり、国に負担を求めることはできません。 (物納費用の例) A 相続登記費用 B 地積測量図の作成費用 C 建物平面図の作成費用 D 工作物あるいは埋設物などの撤去費用 E 物納実務を担当するコンサルタントに対する報酬 F その他 これらの物納費用は相当な額になることも予想されます。物納費用については、被相続人の理解が得られるのなら、相続税対策の一環として、相続開始前に被相続人の負担において準備すれば、その支出分に見合う相続税の軽減を図ることができます。 平成18年の税制改正により、審査期間が法定化されたことに対応するため、土地の筆数が多い場合には書類の整備等が間に合わない可能性があります。提出期限等の延長制度はあっても、物納の手続には時間を要しますので、相続開始前に被相続人が物納準備を行う方がより賢明と思われます。
一般的な申告までの手続
土地等の評価方法は、下記の方法によります。 (1) 土地等の評価
(2) 小規模宅地等の減額 被相続人等の生活基盤維持のためや、その処分には相当の制約を受けることが通常であることから、一定の要件を満たす宅地については、下記の優遇制度が設けられています。 個人が相続または遺贈により取得した財産のうちに、その相続開始の直前において、その相続もしくは遺贈に係る被相続人等の事業の用もしくは居住の用に供されていた宅地等で建物もしくは構築物の敷地の用に供されているものまたは国の事業の用に供されている宅地等で建物の敷地の用に供されているもので一定のもの(以下、「特例対象宅地等」という)がある場合には、その相続または遺贈により財産を取得した者に係るすべての特例対象宅地等のうち、その個人が取得をした特例対象宅地等またはその一部でこの規定の適用を受けるものとして選択したもの(以下、「選択特例対象宅地等」という)については、限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(以下、「小規模宅地等」という)に限り、相続税の価額に算入すべき価額は、その小規模宅地等の価額に次に掲げる小規模宅地等の区分に応じそれぞれに定める割合を乗じて計算した金額とします。
なお、この規定は、未分割である場合には適用されません。また、この規定の適用を受ける場合には、税務署長がやむを得ない事情があると認める場合を除き、期限内申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む)に一定の事項を記載し、かつ、一定の書類を提出しなければなりません。
その他の財産の評価方法は下記の方法によります。 (1) 建物
(2) 保険 被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約の保険金または損害保険契約の保険金を取得した場合においては、その保険金受取人について、その保険金のうち被相続人が負担した保険料の金額に係る保険料で被相続人の死亡時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分の価格により評価します。 なお、保険金を取得した者が相続人である場合には、500万円に法定相続人の数を乗じて計算した金額に相当する金額について、非課税の適用を受けることができます。 (3) 有価証券 有価証券の評価方法は下記の方法によります。
(4) 特定事業用資産の減額の利用 被相続人の親族が医療法人の出資持分を相続、遺贈または相続時精算課税の適用を受ける贈与により取得した場合において、相続開始時から申告期限まで引き続きその医療法人の出資持分を有している場合、その他一定の場合には特定事業用資産の減額の規定を適用し、その医療法人の出資持分の評価額の100分の10を減額することができます。 この規定の適用を受ける場合には、税務署長がやむを得ない事情があると認める場合を除き、期限内申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む)に一定の事項を記載し、かつ、一定の書類を提出しなければなりません。 なお、この規定は、相続税の期限内申告書の提出期限までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない特定事業用資産については、適用されません。 ただし、その分割されていない特定事業用資産が申告期限から3年以内に分割された場合には、この限りではありません。 原則として小規模宅地等の減額の規定の適用を受けている場合には、特定事業用資産の減額の適用を受けることはできません。従って、特定事業用資産の減額を利用した方が有利になるのか、小規模宅地等の減額を利用した方が有利になるのか、比較検討することが必要となります。 (5) 葬式費用・債務 財産の価額から控除すべき債務の額は、相続開始時に現に有する債務で確実と認められるものに限ります。しかし、葬式費用は相続開始時に現に有するものではありませんが、必然的に発生するものであることから控除が認められています。 また、被相続人に係る公租公課については、被相続人の死亡の際に納税義務が確定しているもののほか、被相続人の死亡後に相続税の納税義務者が納付しまたは徴収されることとなったものも含みます。
医療法人の出資持分の評価方法
医療法人の場合には、医療法人出資持分に対する課税に留意する必要があります。 医療法人の出資持分については、「医療法人に対する出資の価額は、取引相場のない株式に準じて計算した価額によって評価する」とされています。 具体的には、通常の取引相場のない株式と同様に、類似業種比準価額と純資産価額とを用いて評価します。なお、医療法人の出資持分については、株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合の20%評価減の適用はありません。 |