目次 第3章


第3章 法人税

1.概要 3-1

医療法人に係る特別措置

 医療法人は法人税法上普通法人としての扱いを受けますが、医療法人特有の優遇措置として以下のようなものがあげられます。

 ・ 特定医療法人に係る法人税の軽減税率(一律22%)
 ・ 同族会社の留保金課税の不適用(医療法人は医療法第54条の規定により剰余金の分配が禁止されているため)
 ・ 社会保険診療報酬に係る概算経費の特例
 ・ 医療機器・建替え病院用建物等に係る減価償却の特例

 これらを除けば、制度上は一般法人と同様に税額を算定して納付することになります。


2.医療法人の収入額の計算 3-2

(1) 収入内容

 医療法人の主な収入の内訳は以下の通りです。

 ・社会保険収入
 ・介護保険収入
 ・自賠責保険収入
 ・労災保険収入
 ・自費項目(健康診断、室料差額、人間ドッグ、予防接種ほか)


(2) 社会保険収入の概要

 医療法人の収入に占める割合が90%を超えることが多い最も重要な項目です。

 社会保険事務局及び国保連合会に対する請求を「レセプト」、患者の自己負担請求を「窓口」請求と言っています。


(3) レセプト請求の概要

 [1]  請求・入金の流れ

 毎月診療報酬の計算を実施しますが、その流れは以下の通りです。
   |
 診療行為
   ↓
 医事課のレセプト資料の確認・調整(翌月1日から8日)
   ↓
 医師の内容確認
   ↓
 社会保険事務局等へのレセプト届出(翌月8日から10日)
   ↓
 支払(振込)通知書(翌々月中旬頃)
 過誤返戻明細の送達 → 医事課で再請求の検討
   ↓
 指定された金融機関での振込入金(翌々月下旬頃)
   ↓
 過誤返戻分の再請求

 [2]  収入計上基準

 役務の提供であり、その行為が終了した場合に収入計上となります。ただし、過誤返戻分については留意が必要です。

 決算時点において税務上計上すべき未収額は過誤返戻分を含む当初の請求額です。法人税法上計上した収入額を値引きその他で減額する場合は、減額が確定した事業年度の計上とすべきです。当該過誤返戻分の減額は、内容の通知が上記の通り診療行為の約2ヶ月後に送達されるものであり、かつ内容調整し請求できる可能性が相当あるため、決算上減額することはできません。


(4) 窓口請求の概要

 [1]  入院収入

 病院等によって異なりますが、回収の安全性を確保するため月複数回請求している場合が多いと思います。最も多いパターンは15日〆と月末〆の2回請求の場合です。

 [2]  外来収入

 外来収入は原則として診察当日に現金回収されるため問題となりませんが、一部の患者につき未収となり延滞してしまう場合もあります。また、健康診断収入などは顧客の会社へ直接請求書を送付する場合もあります。

 [3]  収入計上基準に関する留意事項

 役務の提供であり、その行為が終了した場合に収入計上となります。このため窓口収入では健康診断収入、自賠責保険収入など請求書を送付する項目について、内部管理上遅滞なく請求管理簿に記載されており、経理担当者への毎月の報告がなされているかの確認が必要です。さらに定期的に入金確認が実施されているかの確認も貸倒れを防ぐために必要です。

 外来患者等多数の相手先となること及び自賠責保険など請求から入金までのサイトが長い場合があるなど貸倒れの件数が多数となりやすい項目ですので、未収金の管理簿の整備が必要と考えられます。なお、管理簿の整備は貸倒損失計上時の患者対応履歴を説明する資料となり税務対策上重要項目となります。


(5) その他の収入

 病院等において院内の看護師確保対策としての保育所を有する場合、一定の要件を満たせば補助金が受けられます。この補助金の収入計上時期は原則として当該補助金の入金した日を含む年度の収入となります。ただし、雇用保険関係の助成金などあらかじめ給付金による補てんを前提として手続をとり、その手続のもとに該当する賃金等を支払った場合はこれに見合う給付金収入を見積り計上しなければなりません。

 

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