目次 4-I-2


I 受取配当金

2 配当等の範囲

(1)益金不算入の適用対象

 受取配当の益金不算入規定の適用を受けるのは次の金額です(法23丸数字1)。

 剰余金の配当
 出資に対する剰余金の分配
 特定株式投資信託の収益分配金
 証券投資信託の収益分配金のうち利益の配当または剰余金の分配に相当する額
 証券投資信託の収益分配金のうち配当とみなされる金額は、次のようにして計算します(令19)

(1) 信託期間中における収益の分配 分配金の2分の1相当額
(2) 信託期間の終了または一部解約による収益の分配 分配金からその受益証券の帳簿価額または元本金額のいずれか多い額を控除した金額の2分の1相当額
 なお、(1)と(2)のいずれの場合も、外国の株式や債券等で運用される投資信託については、2分の1ではなく4分の1相当額が対象とされます。

 配当等の元本である株式、出資、証券投資信託の受益証券をその「配当基準日」以前1か月以内に取得し、かつ、その株式等(または同一銘柄の株式等)を基準日後2か月以内に譲渡したときは、益金不算入の規定は適用されません(法23丸数字2)。

 これは、一時的に所有していた株式等(短期所有株式等)の配当にはこの制度を適用しないということで、益金不算入の取扱いを逆手にとって、基準日の間際に株式を取得し配当受領後ただちに売却するといった行為を規制するために設けられている規定です。

 短期所有株式等の数は、次の算式で計算します(令20)。

【算式】


 配当基準日後
 2か月以内に
 譲渡した株式数


×
基準日におけ
る所有株数
× 基準日以前1か月以内の取得株数
基準日より1か
月前の所有株数
基準日以前1か月
以内の取得株数
基準日における所有株数 + 基準日後2か月以内の取得株数

 この計算式では、配当基準日に所有していた株式を平均的に譲渡したものと考えています。


設 例

 当社が所有しているA社(配当基準日は3月末)の株式1万株につき、50万円(1株あたり50円)の配当金を受け取りました。同社株式に関する最近の異動状況は次のとおりです。

 24年2月末現在の所有株数
 24年3月中に取得した株数
 24年3月末現在の所有株数
 24年4・5月中に取得した株数
 24年4・5月中に譲渡した株数
 24年5月末現在の所有株数
7,000株
  3,000株
   10,000株
  2,000株
  4,000株
  8,000株

計 算

 短期所有株式に対する配当金として、益金不算入の適用対象から除かれる金額は次のとおりです。


 4,000株

×
10,000株 × 3,000株
7,000株+3,000株

= 1,000株(短期所有株式数)
10,000株+2,000株

 500,000円 × 1000株

10,000株
=50,000円(適用除外配当金)


(2)みなし配当

 会社法上は剰余金の配当にならないものでも、法人税法上、次のような場合は配当があったものとして(「みなし配当」)、一般の配当と同様に受取配当の益金不算入規定の適用を受けることができます。

 自己株式として発行会社に取得されることを予定して取得した株式を売却する際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当の益金不算入制度を含む)が適用されません(法23丸数字3)。

[1] 金銭等の交付がある場合のみなし配当

 出資先法人の合併、分割型分割、資本の払戻し、解散、組織変更などで金銭等が交付されることがあります。その場合に、交付金額が株式等の帳簿価額を超えるときは、超過額のうち出資先法人の資本金等の額からなる部分の金額以外の金額は、みなし配当になります(法24丸数字1)。

 適格合併や適格分割型分割の場合は、金銭等の交付はないので、みなし配当は生じません。


設 例

 出資先法人の2分の1減資により、1株あたり700円の金銭の交付を受けました。交付財源の内訳は次のとおりです。また、この株式の1株あたり帳簿価額は500円で、所有株式数は1,000株です。

 資本金からなる部分
 資本準備金からなる部分
 利益積立金からなる部分
   250円
300円
150円

仕 訳
(借)  現金預金
 租税公課
 670,000
30,000
  (貸)  有価証券
 受取配当金
 有価証券売却益
500,000
 150,000
50,000



 交付金額と帳簿価額の差額200円(700円−500円)のうち利益積立金からなる部分150円が1株あたりのみなし配当となります。また、残り50円は株式の譲渡益となります。
 なお、みなし配当についても一般の配当と同様に、所得税の源泉徴収(20%)がなされます。

[2] 合併、分割時に生ずるみなし配当

 非適格の合併や分割型分割において、株主が交付を受けた新株のうち分割法人等の利益(資本金等の額を超える部分)を原資とする部分の金額は、みなし配当になります。

 利益積立金の資本組入れ、利益による株式消却など金銭等の交付がない場合には、みなし配当は生じません。

 

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