目次 4-I-3


I 受取配当金

3 益金不算入額の計算

(1)益金不算入制度の趣旨

 受取配当の益金不算入の制度は、損益計算書で計上された受取配当金の全額が益金不算入、ということではありません。まず、さきに述べた「短期所有株式」の配当が除かれます。さらに通常の配当についても、その株式等を購入するのに要した負債の利子を控除します。そしてこれらを控除した残額の50%相当額が、益金不算入の扱いを受けます(法23丸数字1)。

【算式】  (受取配当金−負債利子)×50%=益金不算入額

 この計算で負債利子を控除するのは、株式購入のための借入金利子を損金算入しながら、他方で受取配当金を益金不算入扱いするのは理屈にあわず、「益金損金対応の原則」の観点から、配当を得るのに要した借入金利子をマイナスすることとしているものです。

 また、50%相当額しか益金不算入とならないのは次の理由です。すなわち、もともとこの制度は、他の会社を支配する目的で株式を所有している場合を前提にしています。親会社が所有する子会社株式がその典型ですが、子会社で課税済の利益につき親会社が配当で受け取ったときに再度課税されるとなると、子会社を吸収し親会社の一部門として経営する動きが起こりかねません。税制は経済活動に対して中立でなければならず、そのためにこの制度が設けられています。

 現実の株式保有は、安定株主工作による株式の持合いや財テクによる購入などのケースが一般的です。たとえば、銀行預金をする代わりに株式を購入した場合など、受取利息は益金算入でありながら受取配当金を益金不算入扱いすることに、合理的な理由付けを見出すことは困難です。以上のことから、原則として50%相当額が益金不算入の扱いになっています。

 ただし、子会社株式など関係法人株式等については、上述の理由により、本来の取扱いどおり配当金額から負債利子を控除した全額が益金不算入とされます。

 100%益金不算入とされるのは、保有割合が発行済株式総数の25%以上の株式等を、6か月以上継続して有している場合です(法23丸数字6、令22の3丸数字1一)。


(2)負債利子控除の計算

 完全支配関係(100%出資関係)にある子会社から受ける配当については負債利子を控除せず、受取額の全額が益金不算入とされます(法23丸数字4かっこ書)。また、外国子会社から受ける配当は、受取額の95%相当額を益金不算入とする制度が、別途設けられています(法23の2)。

 上記以外の法人からの配当については、益金不算入額の算定にあたり、次の2つの方法のいずれかにより負債利子の額を計算しなければなりません(令22)。

(1) 総資産按分法
(原則法)
その事業年度に支払う負債の利子のうち、株式等に対応する部分の金額を実績により計算するやり方
(2) 簡便法 基準年度(平成22年4年1日から平成24年3月31日まで)の実績により計算するやり方

 負債利子には借入金利子の他、手形割引料(手形譲渡損)、社債発行差金(社債償還差損)等を含みます(令21丸数字1、基通3−2−1)。なお、売上割引料は負債利子に該当しません(基通3−2−3の2)。

 いずれの方法も、株式購入のための負債利子を、総資産と株式の帳簿価額の割合で按分計算するという考え方に基づいています。

×
 負債利子 株式等の金額

総資産
=株式取得の負債利子

 具体的に、「総資産按分法」により控除する負債利子の計算式は次のとおりです(令22丸数字1丸数字2)。






イ 一般株式の場合
 負債利子 ×
当期末および前期末の
一般株式等の簿価
当期末および前期末の一般の証
券投資信託の受益証券の簿価
×


当期末および前期末の総資産の簿価の合計額
外国の株式や債券等に運用される投資信託については、算式中の「2分の1」は「4分の1」として計算します。
ロ 関係法人株式の場合
 負債利子 × 当期末および前期末の関係法人株式の簿価

当期末および前期末の総資産の簿価の合計額

 計算式の分母の「総資産」の簿価は、貸借対照表に計上されている金額によりますが、以下のような調整を行います(令22丸数字1一、基通3−2−5〜7)。

(1)  貸倒引当金が金銭債権から控除する形式で貸借対照表の借方に計上されている場合は、総資産に加算できます。

(2)  貸倒引当金が貸借対照表に注記されている場合も、総資産に加算できます。

(3)  貸借対照表に圧縮積立金や特別償却準備金が計上されている場合は、総資産から控除します。

(4)  その他有価証券の評価益または評価損が計上されている場合は、総資産から控除(または加算)します。

(5)  税効果会計の適用により貸借対照表に計上している繰延税金資産は、総資産に含まれます。

 なお、上記の総資産按分法に代えて、「簡便法」により負債利子控除額を計算することもできます(令22丸数字5)。

 この場合には、平成22年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始した事業年度を「基準年度」として、その期間について上記の総資産按分法の計算により、一般株式等と関係法人株式等との区分ごとに次表のような控除割合を計算します。

 そして、以後の年度は毎年この割合を使って、次表の算式で配当等から差し引く負債利子の金額を計算します。


便
簡便法

 平成22年度の改正により、従来、平成10年4月1日から平成12年3月31日とされていた基準年度が、上記のように改められました。

【判例・裁決例】
●受取配当等から控除する負債利子の計算では無配の関係法人等も含むとした事例
 「関係法人株式等」に該当するか否かは、所有する株式等の割合および保有期間によって定まるものとされ、配当等の支払があることは何ら要件として規定されていないので、法人の保有するすべての関係法人株式等と解するのが相当である(東京地裁平21.2.3判決)。

 

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