目次 Q8


Q8 税務訴訟の特色について教えて下さい。

 通常の民事訴訟にはない税務訴訟の大きな特色として、不服申立前置主義と厳格な出訴期間制限があります。また、執行不停止の原則についても知っておく必要があります。

 不服申立前置主義 先に述べたとおり、課税処分に不服がある納税者はいきなり訴訟を提起することはできず、原則として2段階の不服申立手続を経なければなりません(不服申立前置主義)。この点、例えば貸したお金を返してもらえない場合に、いきなり訴訟を提起して司法裁判所による救済を求めることができるのとは大きな違いがあることになります。

 このように不服申立前置主義が採られている理由としては、国税に関する処分が専門的、大量的かつ回帰的なものであること、裁決により行政の統一を図る必要があることなどが挙げられています。

 厳格な出訴期間制限 これも先述しましたが、課税処分の取消を求める訴訟は、裁決のあったことを知った日から3ヶ月以内に提起しなければなりません(行訴法第14条第1項)。したがって、裁決の通知を受けた日から3ヶ月を経過した後に提起された訴えは不適法として却下されます。このような厳格な出訴期間制限も通常の民事訴訟にはない特色です。

 厳格な出訴期間制限がおかれた趣旨は、争いの目的である行政処分の効力を長らく不確定な状態におくと、相手方の利害のみならず公共の利害にも影響を生ずることが大きいためであるとされています。
 なお、「裁決のあったことを知った日」とは、現実に裁決のあったことを知った日のことであり、抽象的な知り得べき日のことではありません。しかし、裁決書謄本が郵便により送達された場合のように、それが事実上知り得る状態に置かれたときは、その時にこれを知ったものと推定されます。

 執行不停止の原則 取消訴訟を提起しても、処分の執行は停止されません(行訴法第25条第1項)。この執行不停止の原則は行政処分に公定力があることから導かれます。したがって、課税処分に違法があるとして取消訴訟を提起しても、期日までにその租税を納付しなければなりませんし、これを納付しないときは、税務官庁は滞納処分を行うことができます。

 しかしこれでは、取消訴訟で原告が勝訴しても、事実上権利の回復ができない場合も生じかねません。そこで法は執行停止の制度を規定し、処分の執行または手続の続行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、執行停止の決定をして処分等の執行停止を命ずることができることになっています(行訴法第25条第2項)。

 

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