目次 Q5


外国税額控除

Q5 租税条約限度税率を超過した外国法人税の外国税額控除

 外国税額控除を受けるために、納税した関係書類をチェックしたところ、租税条約を適用していないと考えられる高い税率で納付したD国の使用料に対するタックスレシートと中国の営業税で税額控除対象にならない税金の納付書がありましたので、どちらも外国税額控除対象から除外し、他の国の外国法人税だけを対象に外国税額控除額の算出計算をしましたが、問題ないでしょうか。


Answer 外国税額控除を選択した場合、D国の外国源泉税のうち租税条約の限度税率までの部分は外国税額控除の対象となりますから、計算上控除対象に含めなくても損金不算入となり、限度税率を超える部分はD国で還付を受けるまで、あるいは還付されないことが明らかとなるまで仮払金等として資産計上しておくことになります。中国の営業税は外国税額控除の対象となりませんので、控除対象から除外するのが正しく問題はありません。


《解 説》

 日本は会社の全世界所得を課税対象としていますので、外国で得た所得に対しては外国における課税と日本の課税とのいわゆる国際的二重課税が生じることがあります。この二重課税を排除する手法の一つとして制度化されているのが、外国で納付することとなる外国法人税額をわが国の法人税額から控除する「外国税額控除制度」です。

 この制度の下では、外国で会社の所得を課税標準として課される税、すなわち外国法人税が税額控除の対象となりますが、税額控除を選択した場合は控除対象外国法人税の額は全額損金に算入されません(法法41、法基通16―3―1)。税額控除を選択しない場合は税務上も損金算入されます。

 また、租税条約による限度税率を超えて課された外国法人税のその超える部分については外国税額控除規定の適用はありません(法基通16―3―8)。これは、その外国で租税条約適用に必要な手続きをすれば限度税率を超えて課された外国法人税は還付されると考えられるためです。この場合、還付されるまでは仮払金等として損金経理しないのが一般的でしょう。損金経理した場合には、手続きさえ踏めば還付される税金ですから、還付されないことが明らかとなるまでは税務上損金算入は認められないでしょう。

 このように、租税条約の限度税率を超えて課された部分は控除対象外国法人税の額から除くことになりますが、限度税率までの部分は控除対象外国法人税となります。お尋ねのケースでは、D国源泉税については税額控除を選択せず税務上も損金算入したように見受けられます。この場合、他の控除対象外国法人税について外国税額控除を選択した以上、控除対象外国法人税額の一部のみを損金算入することはできませんので、限度税率までの外国法人税も損金不算入とする必要があります。

 また、条約の限度税率を超える部分は還付を受けるまで、あるいは、還付を受けられないことが明らかとなるまでは、仮払金等として資産計上しておく必要があるでしょう。

 なお、お尋ねのケースとは状況が異なりますが、租税条約の適用対象かどうか適用そのものが不明の場合は、適用されると仮定した場合には限度税率を超える部分も含めて外国税額控除の対象としておき、後日、租税条約が適用され還付を受けた時点で、外国法人税額が減額された場合の調整を行うことも認められると思われます。

 また中国の営業税は、いわゆる流通税であり、会社の所得を課税標準として課される税には当たりませんので、外国税額控除の対象とはなりません。したがって、外国税額控除の対象から除外することはむしろ当然であり、税務上の問題はありません。


 ここまでは業務上の必要性がない個人的な旅行との前提で説明しましたが、一般的に取引先を旅行、観劇等に招待することは行われており、この延長線上で重要な取引先の社長夫妻を海外旅行に招待し、その接待役としてのバランス上自社の社長夫妻がその海外旅行に同行したようなケースを想定して、会社業務の遂行上必要な旅行であったとしたらどうでしょう。想定したようなケースでは、会社の業務の遂行上必要な費用となることはもちろん、取引先の接待のための費用ですから社長夫妻の旅行費用も含めて交際費として差し支えないでしょう。とはいっても、旅行期間や金額は自ずと通常の旅行の範囲に限定されると考えられます。

【参考法令等】
●法法第41条(法人税額から控除する外国税額の損金不算入)、第69条(外国税額の控除)

法基通16―3―1(外国法人税の一部につき控除申告をした場合の取扱い)、16―3―8(租税条約による限度税率超過税額)

 

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