目次 Q3


所得調整(国外法人)

Q3 社長の息子をシンガポール法人の社長に据えて節税

 シンガポールに社長が出資して現地法人(A社)を立ち上げ、日本法人である当社(100%社長出資の同族会社B社)の香港への輸出をA社経由で行うこととしました。A社はペーパー会社(Exempt Private Company)ではありますが、インボイスなどのやり取りはきちんと行い、利ざやを取って商社的な役割を担当させました。実際の業務は当社のシンガポール駐在員に担当させているのですが、A社はシンガポールでの申告に際して、A社の社長には息子であるアメリカの大学院で勉強している長男を就任させ、役員報酬とA社から当社が受け取る業務委託料の支払いでほぼ法人所得が0になるようにしています。税務上大丈夫でしょうか。


Answer A社に対する商社的行為としての利ざや部分は、A社に対する寄附金とみなされて日本法人である貴社に課税されます。A社の実態を伴わない行為に対して与えた利ざやは贈与に当たります。また、A社が業務を行っていたように仮装していたとして仮装行為の認定を受け重加算税の対象とされます。

 また、与えた利ざやは金銭の贈与として法人税法第37条第7項に該当して寄附金に該当します。また、当社の国外関連者であるA社への寄附金は措法第66条の4第3項の寄附金に該当し、全額損金不算入になります。


《解 説》

 実態を伴わない商社的行為は、税務上対価性が認められません。法人税法第22条第4項では、損金の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されることとされており、実態の伴わない取引をすれば、税務上は損金に認められません。

 すなわち、書類上のやり取りがきちんとされていても、取引の注文や納品、代金の回収や取引先との交渉などをペーパー会社が行っていないことから、税務上は否認されることになります。否認にあたっては、租税特別措置法第66条の4の規定によりA社はB社の国外関連者として認定され、認定された寄附金は全額損金になりません。

【参考法令等】
●法法第37条(寄附金の損金不算入)第7項
●措法第66条の4第3項

 

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