目次 Q1


《償却資産処理》

Q1 任意組合を介した節税スキーム

 当社は自動車部品を製造するメーカーです。このたび、ある会合で、任意組合が映画を取得したのに伴って当該任意組合に出資をして、その映画フィルムの耐用年数が2年と短い点を利用して減価償却費を計上することで節税ができると聞きました。そこで当社も今期は大幅な利益が見込まれることから、この任意組合に出資しようと考えていますが、大丈夫でしょうか。


Answer 近年、節税対策として任意組合や匿名組合を利用したスキームものが数多く行われているように聞いていますが、実務上の処理を一歩誤ると節税どころではなくなる危険性があります。

 お尋ねのケースでは、貴社が製造メーカーであり、映画の製作、配給等に関与した事実がないことから任意組合に出資したことが、単に節税目的とされ、任意組合を通じて映画を所有し、その使用収益等を行う意思は有していないと認定され、組合が計上する「減価償却資産」を取得したとして「その減価償却費を損金に算入」した費用は当該組合員である当社が当該映画を取得したとは見られないことから、減価償却費の費用計上が否認される可能性が大です。


《解 説》

 お尋ねのような任意組合の節税スキームについて、平成18年1月24日の最高裁の判決では、「本件組合は、売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても、本件映画に関する権利のほとんどは、本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約により」配給会社に移転しているのであって、「実質的には、本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているというべきである。」と判示しています。

 さらに、「本件映画は、本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず、本件組合の事業の用に供しているものということはできない」として減価償却費の損金算入を認めない判決を下しています。

 このように、任意組合が実質的に事業をしていたかどうかが税務上問われますので、貴社のように節税スキームとして任意組合に参加(出資)することはそのスキーム次第では節税にならないこともあります。

 なお、上記の判決では組合が借りたとする利息分も否認されていますが、この点についても付記しておきます。

【参考法令等】
●平成18年1月24日最高裁判決
●平成12年1月18日大阪高裁判決
●平成10年10月16日大阪地裁判決

 

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