目次 III-1


III.資本に関係する取引等にかかる税制


第1節 自己株式取得に係るみなし配当の益金不算入の制限

 受取配当等の益金不算入制度及び外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度について、自己株式としての取得が行われることが予定されている株式を取得した場合におけるその取得した株式に係るみなし配当の額については、適用しないこととされた。


(1) 改正前の制度

 法人の株主等に対して、当該法人の自己の株式または出資の取得に伴い、金銭または金銭以外の資産の交付が行われた場合に、当該交付資産のうち当該法人の資本金等の額を超える部分の金額は配当とみなされ(法法24マル数字1四、法令23マル数字1四)、当該株主等は受取配当益金不算入制度の適用を受けることとなる(法法23マル数字1)。
 このため、株式の発行法人が自己株式の取得を行う場合に、その自己株式を発行法人に譲渡した個人株主や法人株主においては、課税の繰り延べに該当する取引や市場取引などの一定のものを除き、その譲渡対価のうち「取得資本金額」を超える部分の金額が「みなし配当」に該当し、配当所得等として取り扱われる。
 その際、個人株主であれば、その譲渡対価の一部の所得区分が配当所得に振り換わり、損益通算の有無を中心とした有利・不利が生じるが、法人株主の場合では、受取配当等の益金不算入規定が適用されることによるタックス・メリットが常に生ずる。


(2) 自己株式取得に係るみなし配当の益金不算入の制限

 今回の改正の内容により、自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含む)を適用しないこととされた(法法23マル数字3、23の2マル数字2、81の4マル数字3)。
 なお、完全支配関係にある内国法人間での自己株式の取引の場合については、みなし配当については従前どおり益金不算入制度の適用を受けるが、当該自己株式の譲渡に係る譲渡損益を計上しないこととされている(『グループ法人税制実務ガイドブック』((社)日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部泰久 著)第 I 章第6節参照)。

 この改正の理由について、「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会論点取りまとめ」では、以下のように説明している。

「自己株式として取得されることを予定して取得した株式については、自己株式の取得により生ずるみなし配当に係る益金不算入制度が適用されるとともに譲渡損が計上されるといった本制度の潜脱的利用を防止する観点から、みなし配当に係る益金不算入を認めないことが適当であると考えられる。」

 すなわち、既存の株式に関してその発行法人に譲渡することによってみなし配当を計上して受取配当等益金不算入制度を適用すること自体には問題はないが、その適用を予定して株式を取得することは同制度の濫用であり租税回避に当たると捉えているものと思われる。また、「自己株式として取得されることを予定して取得した」という事実認定がどのような判断基準によって行われるのかということが、実務上、問題となるという点にも留意する必要がある。


(3) 適用時期

 この改正は、法人が平成22年10月1日以後に取得する株式に係る配当等の額について適用される(平成22年改正法附則14、15、24)。

 

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