目次 IV-2


IV.組織再編成税制の改正


第2節 現物分配の創設

 完全支配関係がある内国法人間の現物配当(みなし配当を含む)については、組織再編成の一環として位置づけ、譲渡損益の計上を繰り延べる等の措置が講じられる。この場合、源泉徴収等も行わない。


(1) 会社法上の現物配当

 会社法では、剰余金の配当をするときには「配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く)及び帳簿価額の総額」(会社法454マル数字1一)を決めることとし、さらに、配当財産が金銭以外の財産である場合において、株主に現物配当に代えて金銭分配請求権を与える場合は株主総会の普通決議により、与えない場合は特別決議が必要になることを定め(同454マル数字4、309マル数字11十)、現物配当ができることを明確に規定している。これにより、株主に会社が保有する子会社株式を配当として交付することにより会社分割を行うこと(スピン・オフ)が可能となり、すでにいくつかの事例が現れている。


(2) 現物配当に関する従来の税務上の扱い

 税制では、現物配当について法人税法には明確な規定はなかったが、下記の法人税基本通達改正において、現物配当の課税上の扱いについて現物配当が行われた場合に受取配当等の益金不算入の対象となる配当等の額は、当該現物配当に係る資産の帳簿価額ではなく、当該現物配当の効力発生日における時価によること、また、その解説では、現物配当を行う法人の側について、配当の効力発生日における配当財産の時価により配当等の額を認識し、当該時価と当該配当財産の帳簿価額との差額について、当該配当財産の譲渡益または譲渡損を認識することを明らかにしていた。


(3) 現物分配の創設

 今回の改正では、法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)が、その株主等に対して、剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、または、資本の払い戻し、自己の株式または出資の取得、出資の償却、組織変更に係るみなし配当(法法24マル数字1三〜六)として、金銭以外の資産の交付を行うことを「現物分配」と定義し、現物分配によりその保有する資産の移転を行った法人を「現物分配法人」(法法2十二の六)、資産の移転を受けた法人を「被現物分配法人」(法法2十二の六の二)とする規定が追加された。

(1) 適格とならない現物分配

 適格現物分配とならない現物分配、すなわち内国法人が完全支配関係のない法人、あるいは個人に対して金銭以外の資産を剰余金の配当等として移転する場合については、資産を時価で譲渡したものとする。

(2) 適格現物分配

  その上で、完全支配関係がある法人間で行われる現物分配を「適格現物分配」として、法人税法2十二の十五のような定義規定が置かれた。

 「適格現物分配」の要件に該当する場合には、組織再編成税制上の適格組織再編として位置づけられ、現物分配法人においては、被現物分配法人に移転をした資産の当該適格現物分配の直前の帳簿価額(当該適格現物分配が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の時の帳簿価額)による譲渡をしたものとし(法法62の5マル数字3)、一方、被現物分配法人においては、適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は益金の額に算入しないこととされ(法法62の5マル数字4)、資産の帳簿価額による譲渡を認めている。

 さらに、適格現物分配による資産の譲渡に該当するときは、被現物分配法人の移転する資産の取得価額は帳簿価額に相当する金額とされ(法令123の6マル数字1)、また、残余財産の全部を分配する適格現物分配は、当該残余財産の確定の日の翌日に行われたものとして、法人税法の規定が適用される(法令123の6マル数字1)。
 これにより、例えば、子会社が保有する孫会社株式のすべてを現物配当として親会社に分配することにより、孫会社を直接の子会社とするなどを非課税で行うことが可能になる。

 

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