II-1 |
II.連結納税制度の改善 |
第1節 連結納税適用開始・子会社加入の際の欠損金 |
連結納税の開始または連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人のその開始または加入前に生じた欠損金額を、その個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に追加する。 (1) 改正前の税制−子会社の欠損金の切捨てと時価評価 (1) 連結納税適用開始前・加入前の子会社の欠損金の切捨て 改正前の法人税では、連結納税の開始、連結グループへの加入に際しては、従前の単体納税の下での単体法人を納税単位とする課税関係を清算した後に連結納税の適用を受ける仕組みとするという観点から、原則として、連結子法人となる法人の連結納税適用開始・加入前に生じていた青色欠損金を連結納税の下で繰越控除することは認めないこととされていた(旧法法81の9)。 (2) みなし連結欠損金額 ただし、以下の欠損金額または連結欠損金個別帰属額については、連結納税制度適用開始前に生じた欠損金額であっても、連結事業年度において生じた欠損金額とみなして連結納税制度の下で繰越控除することができる(法法81の9)。この連結欠損金とみなされたもののうち、「連結親法人の欠損金」及び「一定の株式移転によって連結親法人となる会社を設立した場合」については最初の連結事業年度以後の各連結事業年度、「連結親法人を合併法人としグループ外法人を被合併法人とする合併等の場合」については適格合併等の日の属する連結事業年度以後の各連結事業年度において繰越控除を行う。 (3) 連結納税適用開始前・加入前の子会社の時価評価 原則として、連結子法人が連結直前の単体申告において保有する一定の資産については時価で評価して課税関係を清算する(法法61の11、61の12)。 この制度は、連結子会社は連結納税制度適用開始前・加入前に生じた繰越欠損金が持ち込めないにもかかわらず、連結納税制度適用開始前・加入前から保有する含み損のある資産について、開始後・加入後に譲渡して損失を実現できるならば整合性が取れないためと説明されている。しかし、すべての連結子法人について時価評価を行うならば連結納税制度の利用が著しく困難となるため、課税上の弊害が少ないと考えられる場合については時価評価の対象とならない。 (2) 連結子法人の連結適用開始前・加入前の欠損金の利用制限の見直し しかしながら、連結納税制度適用開始前・加入前の子法人の欠損金額自体を否認することは、連結納税制度そのものの理論的帰結ではなく、連結前の欠損金であってもその法人の個別所得との間でのみ相殺するのであれば、連結前の欠損金を連結納税制度の中に持ち込み連結所得を減らすという課税上の弊害も少ないと考えられる。また、この制度自体、平成14年度改正における連結納税制度創設時には財源措置の一環として理解されていた。 そこで、今回の改正により、資産の時価評価制度との整合性を確保するという観点から見直しが行われ、連結納税制度の適用開始または連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人については、その連結納税開始の日前7年以内において生じた青色欠損金額・災害損失欠損金額、及び連結グループへの加入の日前7年以内において生じた青色欠損金額・災害損失欠損金額を、その連結子法人の個別所得金額を限度として、連結納税の下での繰越控除の対象とできることとされた。 連結納税の開始または連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人には、次の法人が該当する。 (1) 連結納税の開始の場合(法法61の11) ア 株式移転完全子法人 イ 長期(5年超)保有されている100%子会社
なお、アの株式移転完全子法人は、これまでもその欠損金を連結納税の下で繰越控除できることとされていたので、新たに、その欠損金を個別所得金額を限度として連結納税の下で繰越控除できる対象となるのは、上記イ〜ケの法人となる。 (2) 連結グループへの加入の場合(法法61の12) ア 連結親法人または連結子法人により設立された100%子会社
改正後の制度では、これらの時価評価対象外子法人(=「特定連結子法人」)の有する欠損金額がみなし連結欠損金額(=「特定連結欠損金額」)として、個別所得金額の範囲で繰越控除の対象に追加される(法法81の9)。 併せて、従来、みなし連結欠損金額として認められていた、連結親法人が連結グループ外の内国法人を吸収合併(適格合併)する場合の被合併法人の未処理欠損金額は、連結親法人の個別所得金額の範囲で繰越控除することとなる。 |