目次 I-7


I.グループ法人税制の創設


第7節 中小企業向け特例措置の大法人の100%子法人に対する適用

 法人税法上の中小法人(資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人)に係る次の制度については、資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上の法人または相互会社等の100%子法人には適用しない。

 (1)  軽減税率(法法66マル数字2マル数字6二イ)
 (2)  特定同族会社の特別税率の不適用(法法67マル数字1
 (3) 貸倒引当金の法定繰入率(措法57の10)
 (4) 交際費の損金不算入制度における定額控除制度(措法61の4)
 (5) 欠損金の繰戻しによる還付制度(措法66の13)

 法人の資本金等を基準とした各種制度の適用の可否について親法人の資本金等の規模も判定要素とすることの是非について、「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会論点取りまとめ」では、次のように様々な考え方があることが指摘されていた。
 「グループ子法人の経営上の位置づけ等を踏まえた検討を行うべきという意見や、各特例制度の趣旨に照らし検討をする必要があるとの意見もある一方、単独の中小零細企業と異なり資金調達能力等に対する政策的配慮の必要が乏しいため中小企業に対する特例を受けさせる必要がないとの意見や、大法人が事業部門を中小法人に分社化した場合と一社集中させた場合とで税負担が大きく異なることは適当ではないという意見、グループ子法人の経営上の位置付けに配慮すると、大法人が有する個々の事業の位置付けにも配慮して、法人内法人の取扱いを認めざるを得なくなるなどの理由から適当ではないとの意見があった。」
 このような考え方を踏まえ、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人を頂点とする企業グループに属する中小法人については、上記の中小企業に関する特例措置を適用しないこととされた。
 なお、資本金・出資金額5億円以上がその基準とされたのは、税法上の大法人では社会通念上の大企業より広範にすぎるため、会社法上、会計監査人の設置義務、業務の適正を確保するための体制の整備義務、連結計算書類の作成義務(大会社のうち有価証券報告書提出会社に限る)などが義務づけられている「大会社」の定義(最終事業年度に係る貸借対照表に計上した資本金の額が5億円以上、または負債の額が200億円以上である会社)に準じたためと説明されている。ただし負債額基準は適用されていない。
 この改正は、法人の平成22年4月1日以後に開始する事業年度について適用される(平成22年改正法附則10マル数字1、73)。

 

目次 次ページ