目次 I-4


I.グループ法人税制の創設


第4節 完全支配関係にある法人間の寄附

 完全支配関係がある内国法人間の寄附金について、その経済実態を内部の資金移動と捉える観点から、支出側の法人において全額を損金不算入とされるとともに、受領側の法人において受贈益の額は、全額を益金不算入とされる。なお、個人(同族関係者を含む)により100%保有される内国法人間での寄附金については、この規定は適用されず、従来どおりの扱いとなる。


(1) 受贈益の益金不算入

 内国法人が法人(外国法人による場合も含む)による完全支配関係にある他の内国法人から受けた受贈益の額(次の寄附金の額に対応するものに限る)は、当該内国法人の所得の計算上、益金の額に算入されない(法法25の2マル数字1)。

 受贈益の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってされるかを問わず、内国法人が金銭その他の資産または経済的な利益の贈与または無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用ならびに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く)を受けた場合の当該金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額または当該経済的な利益のその供与の時における価額による(法法25の2マル数字2)。
 また、資産の低廉譲渡等については、資産の譲渡時の時価と対価との差額等が受贈益の額となる(法法25の2マル数字3)。


(2) 寄附金の損金不算入

 一方で、内国法人が完全支配関係にある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(前述の受贈益の額に対応するものに限る)は、当該内国法人の所得の計算上、損金の額に算入されない(法法37マル数字2)。


(3) 寄附金・受増益がある場合の利益積立金

 寄附金を損金不算入とし、受贈益を益金不算入とする場合、寄附を行った法人と寄附を受けた法人の所得の増減と利益積立金の増減を切り離し、利益積立金を一方の法人から他方の法人に移転させることになるため、連結納税制度における投資簿価修正と同様の措置を講じて、親法人の利益積立金を調整する必要がある。
 そこで、完全支配関係にある内国法人間で、支出側で損金不算入となる寄附金、受取側で益金不算入となる受増益の授受が行われた場合には、当該法人の親法人である法人の利益積立金の加算項目に「寄附修正事由」が新たに規定された(法令9マル数字1七、9の2マル数字1五)。
 「寄附修正事由」とは、子法人が完全支配関係がある他の内国法人から支出された側で寄附金が損金不算入となる受贈益の額を受け、または子法人が完全支配関係がある他の内国法人に対してその受贈益が受取側で益金不算入となる寄附金の額を支出したことをいう。
 具体的には、法人が有する完全支配関係(連結完全支配関係を除く)がある子法人の株式または出資について「寄附修正事由」が生ずる場合には、当該受贈益の額に当該寄附修正事由に係る持分割合(当該子法人の寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式または出資(当該子法人が有する自己の株式または出資を除く)の総数または総額のうちに当該法人が当該直前に有する当該子法人の株式または出資の数または金額の占める割合をいう)を乗じて計算した金額から、寄附修正事由が生ずる場合の当該寄附金の額に当該寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額が、利益積立金に加算される。


(4) 株式の帳簿価額の算出の特例

 また、移動平均法を適用する有価証券の1単位当たりの帳簿価額の算出について、寄附修正事由がある場合の特例として、以下が追加されている(法令119の3マル数字6)。
 「内国法人の有する施行令第9条第1項第七号に規定する子法人の株式について同号に規定する寄附修正事由が生じた場合には、その株式の当該寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した1単位当たりの帳簿価額は、当該寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に同号に掲げる金額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とする。」


(5) 適用時期

 この改正は、法人が平成22年10月1日以後に支出する寄附金の額及び同日以後に受ける受贈益の額について適用される(平成22年改正法附則16、18、25)。


(6) 連結法人間の寄附金

 従来、連結納税制度における連結法人間の寄附金については、支出側で全額損金不算入、受領側で受贈益として全額課税とされており、連結納税制度の普及を阻む大きな要因となっていたが、今回の改正に合わせて連結法人間の寄附金についても、支出法人において全額損金不算入(法法81の6マル数字2)、受領法人において全額益金不算入(法法81の3マル数字1)とされる。
 この規定は、連結法人が平成22年10月1日以後に支出する同項に規定する寄附金の額について適用し、連結法人が同日前に支出した旧法人税法第81条の6第2項に規定する寄附金の額については、なお従前の例による。

 

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