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I.グループ法人税制の創設 |
第3節 完全支配関係がある法人間の資産の譲渡取引 |
完全支配関係がある内国法人間で一定の資産の移転を行ったことにより生ずる譲渡損益は、その資産のそのグループ外への移転等の時に、その移転を行った法人において計上する。 (1) 譲渡損益の繰り延べ グループ法人間取引に係る譲渡損益の繰り延べは、これまで連結納税制度特有の制度(旧法法81の10)であった特定の資産の譲渡損益の繰り延べの適用対象が、完全支配関係がある法人間の取引にまで拡大されたものとして理解することができる。 具体的には、法人税法第61条の13(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定が設けられた。 これにより、含み損のある固定資産、土地や株式をグループ企業間で取引することにより譲渡損失を計上することが封じられる。なお、検討の過程では、海外の税制を参考に、譲渡損失の計上のみを否認するとの考えも示されていたが、単なる節税防止策以上の意味がなく、完全支配関係下にあるグループ企業を一体とみなして課税するとの原則を確立するために、譲渡損益ともに課税を繰り延べることになった。 一方で、100%グループ内におけるこれらの資産の移転は非課税となることから、設備の集約などグループ内での適切な資源配置を課税関係を考慮せずに行うことができる。また、事業全体をグループ内のある法人から別の法人に移管することが、会社分割等を行うことなく、資産譲渡取引として可能となることでグループ経営のリストラクチャリングを迅速に進めることにもつながる。ただし、その場合には、営業権等の無形固定資産の帳簿価額が1,000万円未満である場合には、この部分については課税関係が生じることとなる。 【参考:グループ法人間の資産譲渡取引における損益の扱い】
また、これに合せて完全支配関係にある内国法人間の合併は非適格であっても課税がされない等、企業組織再編成税制にも大きな改正があったが、これらは『グループ法人税制実務ガイドブック』((社)日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部泰久 著)第IV章で説明する。 (2) 譲渡損益調整資産 経済的に一体とみなすことができる企業グループ内での取引等には課税関係を生じさせないことが本来の制度創設の趣旨であれば、完全支配関係がある法人間ではすべての資産の譲渡取引について課税を繰り延べることも考えられよう。 しかし、連結納税制度においても、実務上の観点などから課税が繰り延べられているのは特定の資産=譲渡損益調整資産(旧法法81の10、旧法法61の13)のみとされている。例えば、製造業者とその子会社である販売会社の間で棚卸資産を取引しても、その多くは短期間のうちにグループ外に移転していくのであり、その取引に係る譲渡損益を繰り延べたとしても、多くは同一事業年度の内に実現するものと考えられる。 今回の改正では、連結納税制度における譲渡損益の調整を完全支配関係がある法人間に拡大したとされることから、完全支配関係がある法人間において課税繰り延べの対象となる「譲渡損益調整資産」についても連結納税制度とまったく同じく、「固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のもの」(法法61の13)とされている。 また、これらの資産であっても対象とはならないものとして、法人税法施行令122の14で定められている。 なお、帳簿価額が1,000万円に満たない資産の単位は、法人税法施行規則27の15により以下のように規定されている。 (3) 譲渡損益の実現 グループ内では課税関係を生じさせないとする趣旨からは、当該資産が完全支配関係の外へと移転される時点まで譲渡損益を繰り延べることも考えられる。しかし、資産がグループ外に移転される時まで繰り延べるとするならば、煩雑となるのみならず、例えば土地を分筆してグループ内で再譲渡するなどの場合では譲渡損益自体の認識も困難となる。 そこで、譲渡損益調整資産の譲渡を受けた内国法人=譲受法人において、以下に該当する場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額・譲渡損失額に相当する金額の全部または一部は、譲渡をした内国法人=譲渡法人の当該事業年度において益金の額または損金の額に算入する。
(4) 適用時期 これらの改正は、法人が平成22年10月1日以後に行う譲渡損益調整資産の譲渡について適用される。法人が同日前に行った旧法人税法第61条の13(分割等前事業年度等における連結法人間取引の損益の調整)第1項に規定する譲渡損益調整資産の譲渡に係る同項に規定する譲渡利益額または譲渡損失額については、次に規定する場合を除き、なお従前の例による(平成22年改正法附則22)。 法人が平成22年10月1日前に行った旧法人税法第61条の13第1項または第81条の10(連結法人間取引の損益の調整)第1項に規定する譲渡損益調整資産(「旧譲渡損益調整資産」)の譲渡に係る譲渡利益額または譲渡損失額(「旧譲渡損益額」)に相当する金額につき同日において益金の額または損金の額に算入されていない金額がある場合には、当該旧譲渡損益調整資産を改正法人税法第61条の13第1項に規定する譲渡損益調整資産と、当該旧譲渡損益額を同項に規定する譲渡損益調整資産に係る同項に規定する譲渡利益額または譲渡損失額と、当該法人を当該譲渡利益額または譲渡損失額につき同項の規定の適用を受けた法人と、当該旧譲渡損益調整資産の譲渡を受けた法人を同条第2項に規定する譲受法人と、当該旧譲渡損益額に相当する金額につき旧法人税法第61条の13第2項または第81条の10第2項の規定により益金の額または損金の額に算入された金額を当該譲渡利益額または譲渡損失額に相当する金額につき改正法人税法第61条の13第2項の規定により益金の額または損金の額に算入された金額と、それぞれみなして、同条第2項から第6項までの規定を適用する(平成22年改正法附則22)。 連結法人が平成22年9月30日以前に行った旧法人税法第81条の10第1項に規定する譲渡損益調整資産の譲渡に係る同項に規定する譲渡利益額または譲渡損失額については、附則第22条第2項に規定する場合を除き、なお従前の例による(平成22年改正法附則27)。 |