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税法上の「所有権移転外リース」とは |
リース会計基準の変更に伴って、税法でも所有権移転外リースについては、「売買取引」として処理することになったと聞きましたが、どのような処理になるのですか。 |
前述したように、リース会計基準の変更に伴い、借手にはリースの簡便性を維持するため会計に沿った税制上の処理を認め、貸手には、課税への影響を最小限とする措置が講じられます。 すなわち、ファイナンス・リースに該当するリース取引のうちリース期間の終了の時にリース資産が無償又は名目的な対価の額で賃借人に譲渡されるものであること等の要件に該当しないもの(以下「所有権移転外ファイナンス・リース取引」といいます。)は、売買取引とみなすことになります。 税法上のリース取引とは、次の「中途解約不能」と「フルペイアウト」の二つの要件を満たす取引をいいます(法法64の2)。この基準は、リース会計基準と実質同様のものです。 (1) 中途解約禁止 当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものであること(法法64の2一)。 なお、中途解約禁止の判定に当たっては、禁止条項がない場合であっても、次の要件を満たす場合には、「これらに準ずるものであること」として「禁止条項」に該当することになります(法基通12の5−1−1)。
(2) フルペイアウト 当該賃貸借に係る賃借人が当該賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること(法法64の2二)。 なお、土地の賃貸借で、「所有権移転条項付のもの」及び「割安購入選択権付のもの」は政令の規定で除外されています。これら2つ以外については、賃貸借処理が適用されることになります(法令131の2一、二)。 フルペイアウトの判定に当たっては、解約不能のリース期間に係るリース料総額が、見積現金購入価額のおおむね90%相当額を超えている場合にフルペイアウトに該当すると判定されます。 「所有権移転外リース取引」とは、上記の税務上のリース取引のうち、次のいずれかに該当するもの以外のものをいいます(法令48の2五)。 イ 無償又は名目的な対価で譲渡されるリース取引 ロ 著しく有利な価額で買い取る権利が与えられているリース取引 ハ 専属使用が見込まれる又は識別が困難であると認められるリース取引 ニ リース期間が法定耐用年数に比して相当短いリース取引 そして、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の賃借人のリース資産の償却方法は、リース期間定額法(償却期間をリース期間とし、残存価額をゼロとする定額法をいいます。)とします(法令48の2六)。なお、賃借人が賃借料として経理した場合においても償却費として取り扱われます。
リース譲渡に係る契約において、利息相当額が明らかでない場合がありますから、上記の「ロ 定額法(簡便法)」による取扱いが認められています。 また、所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃貸人については、リース料総額から原価を控除した金額(以下「リース利益額」といいます。)のうち、実質的に受取利息と認められる部分の金額(リース利益額の20%相当額)を利息法により収益計上し、それ以外の部分の金額をリース期間にわたって均等額により収益計上することができます(法法63、法令124)。
すなわち、リース譲渡は、長期割賦販売等の取扱いに含まれ、延払基準の方法が適用できます(法法63)。 リース譲渡に係る延払基準の方法は、次のとおりです(法令124一)。 リースの賃貸人は、次の(1)及び(2)の金額を益金に、(3)の金額を損金に計上することになります。
上記の改正は、平成20年4月1日以後に締結するリ一ス契約に係る所有権移転外ファイナンス・リース取引について適用されます。 なお、平成20年3月31日以前に締結したリース契約に係る所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借資産について、同年4月1日以後に終了する事業年度からリース期間定額法により償却できることになります。 (効果) 従来から、「税務との調整が図られないままでは、リース・ビジネスの重要な存在基盤が損なわれ、我が国企業が、リースを利用した設備投資の機会を失うことにつながる」との意見がありましたが、上記に示された改正によって「リース会計基準」と「税制」の一体的な解決の道が示されたことになります。 |