目次 Q1


Question
 減価償却制度の改正の背景
 平成19年度の税制改正で大幅な減価償却制度の改正が行われましたが、この改正の背景を教えてください。

Answer


 平成19年当時の安倍内閣の基本方針である「経済成長なくして日本の未来なし」の下、国際的なイコールフッティングを確保するために、減価償却制度の抜本的な見直しが平成19年度の税制改正で行われました。

 税制調査会による『平成19年度の税制改正に関する答申』(平成18.12.1)において、「減価償却制度は、償却資産の使用期間にわたって費用と収益を対応させるものであるが、国際的な競争条件を揃え、競争上のハンディキャップをなくすことが重要である。このため、主要国では設けられておらず、合理的な説明が困難な償却限度額(取得価額の95%)については、これを撤廃すべきである。」と述べられています。

 ちなみに、以下の図で示されているように、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスなどでは、法定耐用年数経過時点における残存割合は、「0%」となっており、韓国では、定率法を採用した場合は「5%」となっていますが、翌年に全額償却可能となっています。主要国では、日本のように、「償却可能限度額」が取得価額の95%までとの制限がありません。

【償却可能限度額】
日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 韓国
95%→100% 100% 100% 100% 100% 100%
備忘価額1円 備忘価額1ユーロ

 このように「国際的なイコールフッティングを確保」するために、平成19年度の税制改正において主要国と同様に、残存価額をゼロ(備忘価額1円)としました。また、残存価額をゼロとすることによって、従来の定率法の償却率の算定方法(償却費が残存価額(取得価額の10%)まで毎年一定の割合で逓減するように算出)が使えなくなり、定額法の償却率(耐用年数の逆数)の2.5倍とする算定方法に改正されました。

 × 2.5 = 改正後の定率法の償却率
(注) n:耐用年数

 たとえば、主要国では、「耐用年数10年の機械装置」の償却率は次のようになります。我が国も、改正によって、ほぼ主要国と遜色のない「償却率」となりました。

【定率法の償却率:耐用年数10年の機械装置】
日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 韓国
0.250(注) 0.200 0.250 0.200 0.225 0.259
(注)  × 2.5 = 0.250(定率法の償却率)
10年

 

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