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Q20 子会社支援等に係る判例、裁決例 |
子会社等に対する貸付金の債権を放棄し、その損失額を子会社支援損とした金額が寄附金に当たるか否かが争われた事案。 1)税務当局の主張 税務調査の際に、子会社に対する貸付金の債権放棄にともなう損失額を子会社支援損として損金参入していた金額を寄附金と認定した。 2)会社側の主張 子会社が銀行から債務超過解消を求められており、それができなければ審査請求人が銀行借入金の肩代わりをしなければならない状況の中、合理的な再建計画に基づいてなされたものであり、その負担をしなければグループ企業全体の信用収縮という重大な結果を招くことになり、寄附金には該当しない。 3)裁決 子会社は銀行から債務超過解消を求められていた事実は認められないと認定した上で、子会社自身の判断で請求人に債権放棄を要請していたこと、子会社が資金ショートにより倒産する状況にはなかったこと、貸付金の元本の返還猶予と金利の棚上げを行った場合とを比べてみても、子会社の資金効果は何ら異ならないこと、さらに子会社は自力再建が可能と認められることなどを理由にあげ、債権放棄が倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとか、合理的な再建計画に基づいてなされたものとは認められないと判断し、寄附金に該当する。
A社は、子会社B社、C社を支援する形で多額の貸付けを行っていたが、両子会社の経営悪化により、貸付金が不良債権化していた。不良債権の処理を行い体質改善すべきとの取引銀行の意見もあり、A社は子会社を支援しつつ、不良債権化した両子会社への貸付金の処理をするため次のような方法を行った。
1)税務当局の主張 (a)〜(c)の行為は、当期において見込まれた4億円という利益を消去し、法人税の負担を不当に減少するための行為であり、増資新株の引受額算定に法人税法第132条を適用し、増資新株の払込金額と額面との差額は寄附金に該当すると認定した。 2)会社側の主張 (a)〜(c)の行為は、子会社を救済する必要性、妥当性があり、合理的な行為であること、商法上額面金額が株の最低価額を示すものであること、また法人税法施行令第38条第1項第1号の「払込みにより取得した有価証券の取得価額はその払い込んだ金額としなければならない」という規定からも、税務署の処分は不当である。 3)判決 両子会社への貸付金それ自体が貸倒処理等により損金に算入できるか否かにつき、貸倒損失の計上や債権放棄を行ったことに関し、両子会社がまだ存在できる可能性をもっており、両子会社の財務状況や業態の将来的見通しから、貸付金の全額が回収不能に陥ったと認めることはできないとし、貸倒処理の損金算入は認められないとした。 また、(a)〜(c)の行為は、「法人税の負担を不当に減少させる行為、計算」で「通常の経済人の行為として不合理、不自然な行為・計算」として、法人税法第132条(行為計算否認規定)が適用されると裁決した。
A社の代表取締役の妻が、代表取締役であるB社との間に、両社間における商取引に起因してB社に発生した一切の損失は、A社が賠償するとの契約がなされていた。両社は株主構成もA社の代表取締役およびその親族とする同族会社であったが、A社はB社に同契約に基づき8,300万円の損失補填を行い、この補填が寄附金とされた例。 1)税務当局の主張 両社間の都合だけの契約に基づく損失補填は通常の経済的合理性をまったく無視したものであり、A社はB社以外とはこのような契約も損失補填も行っておらず、関係会社間における単純かつ恣意的な贈与であり、寄附金となる。 2)会社側の主張 A社がB社に対して損失補填を行ったのは、B社が多額の赤字を抱えて経営危機に陥ったからである。A社がB社に対して損失補填を行わなければ、B社が信用失墜による混乱から倒産することは明らかであり、この損失補填はA社の事業遂行上必要不可欠のものである。 3)裁決 両社の契約は、一方的にB社の責めに帰すべき損失までを、A社が補填するとされているが、このような契約は不自然、不合理なものであり、まったく経済的合理性を欠くものである。このような取引は、代表者および株主を同一親族とする関係会社間でしかありえない行為であり、対価性のない単純贈与とされる。 また、この補填がB社の経営危機を回避するため不可欠なものであるか否かについては、補填を受けた当時B社は赤字を抱えていたとしても、その財政状態は資産超過であり、補填の緊急性もなかった。 A社の支援は、補填に係る合理的な整理、または再建に関する合理的な計画に基づくものとなっていないため、この補填が寄附金とされない支援とは看做されない。
関連会社の赤字補填のための売り上げ値引き等の妥当性ならびに経済的な利益の無償の供与は、その取引行為のあった時点で判断するかについての判例。 A社は関連会社であるB社に対し、2,200万円の売上値引を計上した。またB社がC社に対して販売していた製品を、C社からの要求によりB社に代わって買戻しをし、その後の同製品の販売により売買損失が3,050万円発生したことに関する判例。 1)税務当局の主張 B社が赤字になっているとしても、ただちに倒産、解散等に至る状態ではなく、このような援助はB社に対する利益の無償供与の性質を有し、寄附金となる。 また、商品を買戻しして生じた損失も、本来B社が買い戻すべきものであり、この買戻しにより結果的に損失が発生しているのでこれもB社に対する寄附金である。 2)会社側の主張 B社は赤字であり、B社が採算が取れるようにするための売買価額の見直しであり、営業上の費用である。またこのまま放置すると当社も経営危機に陥る可能性があり、このような支援は寄附金とならない。 次に、買戻製品の件は、相手先が当社に要求してきたものであり、買戻価額は当時の相場価額であり、その後の予想外の相場下落によるものであり、買戻時点ではこの売買損失は予想できなかったのであり寄附金とならない。 3)判決 寄附金から除外するものとして、広告宣伝費および見本費の費用その他これに類するものの費用ならびに交際費、接待費および福利厚生費とされるべきものと規定しているが、これらはいずれも営業上の費用であって、売上値引は営業上の費用ではない。 また、B社がたとえ赤字が生じていたとしても、自力で銀行から借入れができる状態であったということは、ただちに倒産、解散または再建のための緊急的な支援が必要な状態にあったとはいえず、赤字補填のための経済的な利益の無償供与に相当し寄附金となる。 次に、法人税法第37条第6項が寄附金として扱う経済的な利益の無償供与は、その取引の時点で、自己の損失においてもっぱら他の者へ利益を供与するという性質を有するような行為のみをいうものと解すべきであり、結果的に自己の不利益となり、他の者に利益を供するものとなったに過ぎない場合は寄附金とはならない。 |