目次 Q19


Q19 グループ企業のゴルフ場の整理

Question
 当社のグループ企業であるゴルフ場が、ご多分にもれず営業状況が年々悪化し、大幅な債務超過の状況にあります。このゴルフ場はバブル発生の初期段階の、資本関係がない場合は連結子会社としなくともよかった時代に設立された会社で、連結決算に含めないようにするために、当社株主の所有する同族会社が当該会社の全株(1億円)を所有しており、当社との資本関係はありません。しかしながら、当初から資金貸付はもちろんのこと、銀行借入の保証も行ってきており、当該会社の役員はすべて当社の役員および従業員が就任し、世間一般からは当社の子会社が経営するゴルフ場と看做されています。

 現在も毎期連続して欠損計上が続いており、今後も事業好転の見込みがないため、このままでは当社の貸付金がますます増加する一方であり、当社自体の存続にもかかわる状況となってきましたので、当該会社を整理することにしました。

 直近の決算書における債務超過額は10億円、当社以外の債権者としては大口の会員預かり金(80億円)がありますが、それ以外の負債はほとんどが当社の債権70億円(整理する場合の銀行借入金の代位弁済30億円を含む)となっています。

 以上のような状況にある会社を整理する際の、次の事項についてのご指導お願いします。

(1) 会社整理の方法はどのような方法がありますか。

(2) 当該会社は当社の子会社ではないのですが、当社が中心として行う会社整理に対し、税務上問題となりますか。

(3) 整理に際し当社は上記の代位弁済額を含めて70億円の債権放棄が必要と思われますが、税務上問題となりますか。


Answer


 (1)会社整理の方法

 企業整理の手法は、バブル崩壊による大量の企業整理が必要不可欠になったこと、また、バブル崩壊後海外の企業と対抗できる企業育成のため、企業の効率化、経営革新を図る目的で、独占禁止法の改正に始まり、商法、税法および企業会計基準等の改正等が行われています。この結果、企業および企業グループの組織を再編成し、または企業構造の基本的な組替え、すなわち企業再編が実行しやすくなりました。

 主な企業再編の手法としては、売却・廃止、合併、会社分割、株式交換、株式移転、現物出資等がありますが、ご質問の整理対象会社は債務超過会社であり、バブル期に設立されたことを考慮すると、決算上の債務超過額より実額の債務超過額のほうがより大きな金額となっているのは間違いないと思われます。債務超過会社とすると、合併、会社分割、株式交換、株式移転はできないと一般に解されていますので、当該会社を売却するか、廃止するかの方法が考えられます。

 具体的には、ゴルフ場の事業を営業譲渡する方法、ゴルフ場会社を子会社化して株式を売却する方法、法的処理による会社整理等が考えられます。


 (2)会社整理に対し税務上問題となること

 「子会社等」とは、資本(親子)関係、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有するものとされていますので(法人税基本通達9−4−1(注))、単に資本(親子)関係がないことのみをもって「子会社等に該当しない」とするものではありません。

 たとえば、業界の上部団体等が業界全体の信用維持のために支援を行う場合などは、その上部団体等にとって、この業者は子会社等に該当すると考えられます。また、金融機関等が融資を行っている個人においても、取引関係を有するものに含まれ、子会社等に含まれることになります。

 貴社の場合は、設立当初から資金支援、銀行借入の債務保証を行っており、役員全員が貴社の役員、従業員であることから、資金関係および人的関係から判断して、当該ゴルフ場は子会社等に該当するものと思われます。


 (3)債権放棄のときに税務上問題となること

 法人が子会社等の解散、経営権の譲渡等にともない、当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担または債権放棄をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであると認められるため、やむを得ずその損失負担等をするに至った等、そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとされています(法人税基本通達9−4−1)。

 ご質問のゴルフ会社は連続して欠損を計上し続けており、今後とも事業の好転が認められず、このままでは今後より一層貴社の損失負担等が見込まれるとのことであれば、当該子会社等の整理に基づく債権放棄は寄附金の額には該当しません。

 貴社の債権総額が70億円と膨大なことから、税務上のトラブルを避けるため、国税局が行っている、「再建支援等事案に係る事前相談」を受けることをお勧めします。相談窓口は、各国税局の審理課(審理官)、沖縄国税事務所の法人課税課または調査課であり、特定調停に関する事前相談は地方裁判所の所在地を管轄する税務署でも受け付けています。

 

目次 次ページ