目次 Q9


Q9 前渡金を支出した先が民事再生手続に入った場合

Question
 当社は下請け先に対し前渡金を支払っていましたが、当該前渡金の対象である発注をキャンセルし、前渡金を返還するよう請求したところ、下請け先の資金繰りが悪いため、未回収となってしまいました。

 このたび、当該下請け会社が民事再生法に規定する再生手続きの申立てを行いましたが、この前渡金に対して、個別評価の貸倒引当金を計上することはできますでしょうか。


Answer


 平成10年の税制改正により、債権償却特別勘定が個別評価金銭債権に係る貸倒引当金として制度化されました。この改正により、貸倒引当金は「個別評価する金銭債権」と「一括して評価する債権」とに区分して計算されることとなり、その設定範囲は異なります。

 つまり、個別評価の対象となる債権は「売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権」に限定されていません。なお。ある債務者に対する債権が個別評価債権に該当する場合には、当該債務者に係る債権の全額が一括評価債権の対象から外れます(法人税法第52条第2項)。

 まず、前渡金については、そのままでは一括評価する売掛債権等には該当しません(法人税基本通達11−2−18)。しかしながら、個別評価の金銭債権に係る貸倒引当金を規定する法人税法第52条第1項に記載されている「貸倒れその他これに類する事由」には、売掛金、貸付金その他これらに類する金銭債権の貸倒れのほか、たとえば、保証金や前渡金等について返還請求を行った場合における当該返還請求債権が回収不能であると見込まれるときが含まれます(法人税基本通達11−2−2)。

 ご質問の場合、貴社の下請先の会社に対する前渡金については返還請求をしているため、当該下請先が民事再生法の申立てをした場合には、法人税法施行令第96条第1項第3号(形式基準)による貸倒引当金の計上が可能となります。

 なお、この場合でも、法人税法施行令第96条第1項第2号(実質基準)による繰入額について検討し、どちらか大きい金額を計上することが税務上有利となります。

 

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