目次 Q7


Q7 担保物の処分以外に回収が見込まれない場合等の
個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入れ

Question
 法人の有する金銭債権に関し、担保物があるときはその担保物を処分した後でなければ貸倒処理をすることができないのが原則かと思います。

 ただし、債務者の状況等からみて、個別評価の金銭債権の貸倒引当金の繰入れを設定できるケースがあると聞きました。どういったケースであるのかご教示く ださい。


Answer


 法人の有する金銭債権については、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金処理をすることができます。しかし、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒処理をすることはできないものとされております(法人税基本通達9−6−2)。

 しかし、債務者の状況から担保物の処分以外には債権回収の途がないにもかかわらず、実務上権利関係の絡みその他の事情から当該担保物の処分には時間が多く係るケースも少なくありません。

 このため、法人税法施行令第96条第1項第2号の繰入事由に基づく個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入れにおいて、「その他の事由が生じていることにより」として、こうしたケースについても繰入設定事由があるものとして取り扱われています。

 法人税基本通達11−2−8においては、法人税法施行令第96条第1項第2号(貸倒引当金勘定への繰入限度額)に規定する「その他の事由が生じていることにより、当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合」には、次に掲げる場合が含まれることに留意するとあります。また、この場合において、同号に規定するその取立て等の見込みがないと認められる金額とは、当該回収できないことが明らかになった金額または当該未収利息として計上した金額を言います。

1) 法人の有するその金銭債権の額のうち、担保物の処分によって得られると見込まれる金額以外の金額につき回収できないことが明らかになった場合において、その担保物の処分に日時を要すると認められるとき

2) 貸付金または有価証券に係る未収利息を資産に計上している場合において、当該計上した事業年度終了の日から2年を経過した日の前日を含む事業年度終了の日までの期間に、各種の手段を活用した支払の督促等の回収の努力をしたにもかかわらず、当該期間内に当該貸付金等に係る未収利息につき、債務者が債務超過に陥っている等の事由からその入金が全くないとき。

 上記2)の場合の貸付金等に係る未収利息については、法人税基本通達2−1−25との整合性を加味したものと考えられます。

 債務者が債務超過に陥っていることその他相当の理由により、貸付金等の利子につき支払いを督促したにもかかわらず、直近6月等以内にその支払期日が到来したものの全額が期末までに未収となっており、かつ、直近6月等以内に最近発生利子以外の利子について支払いを受けた金額がまったくないかまたはきわめて少額である場合には、当該事業年度に係る利子等については益金の額に計上しなくてもよいとされています(法基通2−1−25)。

 これは、元本回収さえも危ぶまれる中、その果実である利息についてもいずれ回収不能と見込まれるような未収利息までもただちに益金として計上することは実情にそぐわないことから、益金に計上しなくてもよいとされる規定です。

 上記の2)は、これとの整合性をとる上から、未収利息計上の最後の事業年度終了の日から2年を経過した日を含む事業年度終了の日までの期間内にその回収のためさまざまな手段を講じたが、債務者が債務超過に陥っている等の事由により、その未収利息の入金がまったくないときは、回収不能の個別評価金銭債権として貸倒引当金の繰入れができることを明らかにしたものです。

 

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