目次 Q8


Question
 特定医療法人の税務上の優遇措置
 特定医療法人は、他の民間医療法人に比べて公益性が高く、税務上優遇されていると聞きましたが、どのような点で優遇されているのですか。

Answer
 特定医療法人は、租税特別措置法に規定されている医療法人ですので、税制面で法人税等の軽減や出資持分の相続税非課税などの優遇措置があります。


[1]出資持分の相続税非課税

 特定医療法人は国税庁長官の承認を受け、定款変更により出資持分の定めのない医療法人へ移行することができます。この定款変更時に出資持分に対する払戻請求権を放棄しますので、出資持分は相続税の課税対象財産には含まれません。したがって、特定医療法人移行後に相続が発生した場合、出資持分に対して相続税が課税されることはありません。


[2]法人税・地方税の軽減

 特定医療法人になると、承認を受けた日の属する事業年度から法人税率が一律22%となります。期末資本金が1億円以下の一般の医療法人ですと年間所得800万円以下までは22%ですが、年間所得800万円超は30%の税率となるので、約8%が軽減されます。

 また、道府県民税や市町村民税の法人税割は法人税額に基づいて計算されるため、税率自体は変わりませんが、法人税の軽減に伴ってこちらも軽減されます。

 したがって、法人税等全体では約10%程度、実効税率が軽減されます。医療法人はもともと社会保険診療報酬等に係る所得については事業税が非課税とされているので、株式会社等に比べて実効税率が低くなっています。


【覚  書】


租税特別措置法第67条の2の適用を受ける
ための社団たる医療法人の組織変更について
 標記の件に関し下記のとおり了解し覚書を交換するものとする。

   昭和39年12月28日

大蔵省主税局税制第一課長
山  下  元  利
大蔵省主税局税制第三課長
久  光  重  平
国税庁直税部審理課長
小  宮      保
厚生省医務局総務課長
渥  美  節  夫


租税特別措置法第67条の2の適用を受けるためには、既設の出資持分の定めのある社団たる医療法人は、その組織を変更しなければならないが、その組織の変更については、次によることとする。

 1.  組織の変更については、既往の出資持分の定めのある社団たる医療法人について清算の手続きをなすべきものであるが、その変更後の医療法人が租税特別措置法第40条及び第67条の2の承認を受ける各要件に該当しているものに限り、定款の変更の方法によることを認める。

 2.  1により昭和41年3月末日までに定款を変更し、租税特別措置法第67条の2により大蔵大臣の承認を受けた場合には、その変更につき法人税、所得税及び贈与税の課税はしない。医療法人が特別の事由があるため、同日以後において1の手続きにより組織の変更を行おうとする場合において大蔵省及び厚生省の協議により承認されたときについてもまた同様とする。




 実効税率は社会保険診療報酬等の割合によって異なってきますが、医療法人の多くが35〜38%なのに対し、特定医療法人は25〜28%に軽減されることになります。


[3]移行時の法人税、所得税及び贈与税の非課税

 特定医療法人への移行は、出資持分の定めのある医療法人から出資持分の定めのない医療法人への移行なので、通常は解散・設立に伴う組織の変更として清算所得課税等が生じることになります。

 しかし、特定医療法人が移行時に非課税とされるのは、「租税特別措置法第67条の2の適用を受けるための社団たる医療法人の組織変更について」(覚書。前頁参照)によって取り決められているためです。

 この覚書によると、組織変更が特定医療法人への移行に関連して行われるものであり、租税特別措置法第40条及び同法第67条の2の要件を満たしている場合には、定款変更による組織の変更と認め、清算所得課税等は生じないとしています。

 したがって、定款変更を行って特定医療法人の承認を受けた場合には、その移行につき法人税、所得税及び贈与税等は課税されません。


[4]その他の税

  看護師、准看護師、歯科衛生士、歯科技工士、助産師、臨床検査技師、理学療法士及び作業療法士の養成施設の不動産取得税及び固定資産税が非課税とされています。

 

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