目次 Q7


Question
 新医療法による医療法人制度
 なぜ、基金拠出型医療法人が制度化されたのですか。

Answer
 もともと医療法の大前提は医療の非営利性の徹底でした。第5次医療法改正では、この非営利性の徹底が改めて強化されたといえます。


[1]新医療法における医療法人制度

 新医療法における医療法人制度は、非営利的で、かつ公益性が高いと認定された社会医療法人、非営利性を徹底した基金拠出型医療法人を含む持分の定めのない医療法人と医療法人財団、そして既存の出資持分の定めのある医療法人社団に大別されます。


【新しい医療法人制度のイメージ】
【新しい医療法人制度のイメージ】


[2]医療法人の非営利性

 一般の医療法人では、医療法第54条によって剰余金の配当が禁止されています。その一方、わが国の医療法人のほとんどの法人類型である持分の定めのある医療法人社団の出資者が退社した場合には、当初出資した金額だけでなく、医療経営の中で増加した利益の留保である剰余金部分についての払戻請求をすることが可能でした。また、医療法人が解散した場合には、残余財産は基本的に出資者に帰属するようになっていました。

 この形態ですと、出資者は配当の禁止によって毎期継続した配当を得ることはできませんが、退社の時点や解散の時点で留保された剰余金部分の財産を獲得できる点で、結果的に配当をまとめて得ることができるのと変わらないこととなります。このことは、医療法人の非営利性を徹底したい国の医療政策にとっては長年の課題となっていました。また、配当ができないことで一時に多額の出資の払戻請求を受ける医療法人にとって、そして出資持分の相続を受ける相続人にとっても大きな問題となっていました。


[3]基金拠出型医療法人の財産の取扱い

 基金拠出型医療法人では、基金の拠出をした拠出者が出資者に位置づけられますが、財産の取扱いが大きく異なってきます。

 まず、配当の禁止については今後も変わることはありませんが、基金拠出型医療法人の拠出者たる社員が退社した場合には、当初拠出した額を限度として基金が拠出者に返還されることとなります。また、医療法人が解散した場合にも、同様に当初拠出額を限度として基金が返還されることとなります。つまり、基金拠出型医療法人では、医療法人が留保している剰余金の多寡にかかわらず、拠出者が当初拠出した基金以外に剰余金部分は返還されないこととなるため、配当禁止の考え方が、退社時や解散時の基金の返還においても貫かれることとなります。

 この取扱いは、非営利性の強化という第5次医療法改正の考え方を大きく反映したものであるといえます。


[4]残余財産の取扱い

 医療法第44条第4項では、(定款に)解散に関する規定に掲げる事項中に、「残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、国若しくは地方公共団体又は医療法人その他の医療を提供する者であつて厚生労働省令で定めるもののうちから選定されるようにしなければならない」と規定しています。

 また、医療法第56条第1項では、「解散した医療法人の残余財産は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、定款又は寄附行為の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する」と規定し、第2項では、「前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する」と規定しています。

 これらの条文を要約してみると次のようになります。

 (a)  定款中の解散に関する規定では、財産の帰属先を国、地方公共団体、一定の医療法人等とする。

 (b)  合併や破産以外で解散したときは、(a)のどこかに財産を帰属させる。

 (c)  (b)で処分されない財産は国庫に帰属する。

 つまり、非営利性の強化とともに、基金拠出型医療法人では解散時の残余財産の帰属先を基本的には国庫等に定めているのです。

 上記の第44条第4項の条文は旧医療法にはありませんでしたが、第5次医療法改正によって追加されたものです。

 なお、旧医療法第56条では、医療法人社団と医療法人財団の財産の処分と財産の帰属先についての条項がありましたが、第5次医療法改正ではその部分が削除されました。医療法改正によって、定款または寄附行為の枠内で処分されない財産は、例外なく国庫に帰属する条文に変更されたのです。

 

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