目次 Q6


Question
 解散前の事前準備
 解散前に確認しておくべきことや事前準備はありますか。

Answer
 解散前に確認しておくべき事項として、解散の時期、企業価値の概算金額の把握等について整理しておく必要があります。また、廃院により他の者に譲渡することを予定している場合には、M&Aアドバイザー、その他の専門家に業務を委託するかどうかも検討します。


[1]解散の時期

 解散の事由が、特に廃院及び合併の際は、もう一度、解散意思の確認を行う必要があります。「ゴーイング・コンサーン」といわれるように、法人は永遠であることが大前提です。現状の問題点について、あらゆる解決策を検討し、「解散」を最善策として選択しているかどうか、再度、意思決定の確認を行ってください。「解散認可申請書」の提出後または合併契約等の締結後に「解散」の取消しを行うことは原則としてできないので留意が必要です。


[2]企業価値の概算金額の把握

 この時点で時価純資産額法等による企業価値の測定を厳密に行う必要はありませんが、帳簿上の金額と時価に乖離が生じている場合は意思決定に重大な影響を及ぼす可能性があるので、大まかな金額を把握しておくことが重要です。

 チェックすべき主な事項は以下のとおりです。

 (1) 所有財産の処分可能価額の金額

 (a)  未収入金及び貸付金等のうち回収困難なものが含まれていないか。

 (b)  たな卸資産について、陳腐化等により時価が著しく低い価額になっているものがないか。

 (c)  土地については「1物4価」(実勢価格、公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額)といわれていますが、最低限「固定資産税評価額」の価額に基づく時価を把握しておきます。一般的に「実勢価格」は「公示価格」よりも高く、「相続税評価額」は時価の8割、「固定資産税評価額」は時価の7割といわれています。

 (d)  建物等については、内外専門家の判断を要するところですが、最低限「固定資産税評価額」を把握しておきます。

 (e)  一般事業会社の場合は、この時点で会社が粉飾決算をしていないかどうかをチェックする必要がありますが、医療法人の場合、粉飾決算をすることは稀なため、心配する必要はないと考えられます。


 (2) 簿外負債の金額

 (a)  退職給与引当金及び賞与引当金について積み増しする必要はないか。

 (b)  偶発債務、特に債務保証による弁済金について、支払う可能性が高いか。

 (c)  リース契約解除に伴う違約金等が発生しないか。


[3]M&Aアドバイザーへの業務委託の検討

 病院または診療所の廃院により他の者に譲渡する場合には、原則として当事者間同士で交渉を進めることになりますが、税務・法務・労務など専門知識を要するために難航することが予想されます。交渉が決裂することのないようM&Aアドバイザー、税理士その他の専門家を仲介者として活用することをお勧めします。業務報酬として手数料を支払う必要がありますが、仲介者にアドバイスを受けたり、交渉に立ち会ってもらうことにより建設的に交渉を進めることができます。

 アドバイザーの選定基準には医療法を熟知していることやフットワークの軽さなども考慮する必要があります。

 

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