●今月の特集
平成の時代になって企業の経営のルールが大きく変わりました。市場原理の導入、担保融資から決算内容融資、終身雇用・年功序列から能力主義、成果主義等々です。この時代の変化に対応して、経営会議システムを導入してはいかがでしょうか。経営会議システムとは、経営計画と月次決算の連動、管理会計と財務会計との連動、過去会計と未来会計の連動による予算・実績差異、予想実績損益計算書、予想・実績資金繰り表等により、経営の先行管理を可能とする経営管理の方法です。 【月次決算】【経営計画】というと何か面倒な、難しい仕組みを導入することだと思う方も多いのですが、いたって簡単です。 要は、企業の業績予想をきちんと月次予算化し、毎月計画通りにいっているかどうかをチェックし、このまま計画通りに推移すれば、売上、利益はいくらか、税金はいくら位予定すればいいか、資金は大丈夫かを見通しながら会社を経営していこうというものです。 中小企業はいつも危険と隣合わせ、倒産、破綻、夜逃げをする夢を見ない経営者はいません。そんな不安を払拭し、常に数値を見ながら経営するという当たり前のことに過ぎないのですが、なぜか実行する企業が少ないのが実状です。それでも経営計画は立てている企業は少しあります。 年度末の決算は税金の申告、融資等のためにどの会社も行います。しかし、考えて見てください。期末になって、1年間の実績を振り返っても遅いのです。経営計画・月次予算を立てる一方、月次決算を行っていれば、予算・実績差異分析を行うことが出来、実績と予算の背理があれば、原因追及からその原因を取り除くアクションを行うことができます。 不況がこようがびくともしない盤石な経営基盤の企業とは、すべての部門、店舗等ですべての人が計画通りに目標を達成し、その結果企業としても経営計画を達成・実現できる企業なのです。 月次決算と月次予算とを結合した【経営会議】は企業経営管理のインフラです。 【経営会議】とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、定義はいたって簡単。月次予算を作成した会社が、毎月、月ごとに正しい決算を行い、計画が達成されたか否かを予算・実績比較し、経過月実績+未経過月予算に基づき、毎月予想決算、予想・実績資金繰り表等を確認しながら経営を管理していく仕組みです。 経営会議の仕組み 【1】パソコン会計を導入する。すでにパソコン会計で経理処理をしている。 パソコン会計で経理処理しているメリットはいろいろありますが、今回は代表的なものを4つあげておきます。
損益計画と資金計画を月次予算レベルまで作成します。前月号で詳しく紹介しましたが、最初からあまり力を入れないことです。極論すれば、前期の損益推移通りでもいいと思います。経営計画については、多くの人が多くのことを書いています。しかし、重要なことは経営計画を立てることではありません。会社が計画と実績の数値を見て今後の会社の進路をみんなで判断していくことが目的なのです。 ※経営計画から経営会議へ ※経営計画をお飾りにしないために せっかく苦労して経営計画・月次予算も会社のお飾りになってしまうことの背景には様々な理由があります。 1.時間的制約 経営計画・月次予算が時間的制約のためいつもギリギリで作成され、企業で一番重要な計画達成の方法が全く議論されず単なる絵に描いた餅、机上の空論で終わってしまっていることです。予算達成の具体的手順を欠いた経営計画だからです。 2.単なる数字の当てはめ 年度目標や各部門の計画が年計画数値の1/12にしたものに過ぎないもの。 経営陣の一番大事な経営計画の作成が、単なる数字の当てはめに終わっていいのでしょうか。 3.予算に対する社員の認識の低さ 経営者の上意下達式の経営計画は社員に何の意味も与えません。景気動向、同業他社動向、得意先、消費者、商品構成や具体的手順を無視した、前期比120%アップ売上目標と言われてもしらけるばかりです。 ※経営計画を全社的なものにするためには以下のことに留意する必要があります。
以上 本当に経営計画が遂行できるかは、如何に【月次経営会議】を上手にこなしていくかにかかっています。
【4】毎月定例日に経営会議を開催します。 毎月10日、第三金曜日、25日等 決まった日に会社の経営陣の意思決定会議を実施します。 経営会議には定型的資料として、最低でも以下の資料を用意します。 (1)予算・実績差異分析表 (2)異常値がある科目の総勘定元帳 (3)経過月実績+未経過月予算=予想決算書 (4)経過月実績+未経過月予算の予想・実績資金繰り表。 1.予算・実績差異分析表【図1参照】 年度始めに計画した月次予算と月次実績とを比較し、異常値を検討します。 異常値の原因として、 (1)予算が過大、あるいは過小 (2)実績の誤り、仕訳間違い、月ズレ等 (3)予期せぬ費用等の発生、その妥当性と費用対効果の検討 【図1】 2.異常値総勘定元帳【図2参照】 経営者の考えた月次予算と実際の費用等の異常値について、その内容の検討資料として、異常値科目の元帳を添付します。経営者のほとんどは元帳を見ません。異常値総勘定元帳により内容、取引の確認をしていただきます。内部牽制、不正防止についても効果があります。 【図2】 3.経過月実績+未経過月予算=予想決算書【図3参照】 この表によって、このまま推移すれば、当初の経営目標に到達するかどうかが、毎月一目瞭然です。 売上・原価率・売上総利益・人件費率・経費・営業利益・経常利益・税引き後利益等が明確な数字で見えます。黒字であれば決算対策を、赤字であれば黒字化するための経営判断を経営会議で検討することが一番大事な経営者の仕事です。 【図3】 4.経過月実績+未経過月予算の予想・実績資金繰り表【図4参照 予想・実績資金繰り表で会社のお金の出入りを管理する。 税引き前利益が赤字の場合、減価償却費を差し引いた赤字金額だけが資金が手元から消えていきます。手元資金が足りなければ必然的に借入に頼ることになります。借入すれば金利負担が増え、更に収益を圧迫し、赤字が加算されていくという泥沼に入り込みます。 会社の存続条件を順序づければ、 (1)まず、毎月の月次決算の損益計算を黒字にする。 (2)次に、毎月の資金繰りの営業収支を黒字にする。
財務支出の欄を見てください。差引営業収支が年間計で15,919,725円、財務収支が△4,839,472円となり、営業収支の範囲で財務支出が賄えます。結果、銀行の借入を約定通り返済し、税金を支払っても、無借金でお金が廻り、期末に17,926,619円残る資金計画となっています。 ※財務収支とは 借入金の返済・定期積金・設備投資等の支出は、営業収支・損益とは関係なくお金が出ていきます。借入金の返済は、借り入れたお金を返済するだけで、いくら返済しても損益に関係がありません。定期積金も、いくら毎月積立しても損益とは全く関係ありません。これらは手元のすぐ使えるお金ではなくなることだけです。 月次定例経営会議で資金チェックをする。 以上の関係から解るように、月次のお金が廻るためには営業収支の範囲で財務収支が賄われているかどうかが許容範囲だと分かります。月次の営業収支を超えた財務支出を発生させてしまうと、その額だけ資金が足りなくなります。月次の営業収支、損益の構造と月次の資金の管理は不可分の関係にあることを理解してください。月次決算、月次実績資金繰り表をしっかり把握し貴社の資金の流れを理解することが財務の第一歩と言えます。 厳しい経営環境の今日、これらの資金実態を把握しないで企業は生き延びることができません。 月次決算による正しい月次決算書から月次実績資金繰り表を手にしてください。 【図4】
「1人あたりの売上高」「1人あたりの売上総利益」「1人あたりの営業利益」 規模が関係なく他社との比較ができ、自社の問題点発見が簡単 ●自社の問題点発見が簡単 直近の決算書を用意してください。決算から半年以上経過している場合は、直近の月次決算・試算表でも結構です。 【売上高】【売上総利益】【営業利益】【経常利益】を従業員数で割ると1人あたりの経営数値が得られます。それぞれの数値を【1人あたり売上高】【1人あたり売上総利益】【1人あたり営業利益】【1人あたり経常利益】といいます。 ●1人あたりの分析をする場合。社員数に関して、バイト・中途社員の取り扱いが困難な場合。
以下事例を見ながら、1人あたりの経営数値の見方を検討する。 (事例1)A社の場合 【会社創立以来の利益を計上した会社】
A社の1人あたりの経営数値は、目標より数段良いという事が分かります。
(事例2)B社の場合【大幅な赤字決算、倒産の危機・再建案の立案中】
B社の1人あたりの経営数値は、目標より非常に悪いことがすぐ分かります。
B社の再建案 1人あたりの経営数値改善による再建案
※ 最低売上 3%の上昇 ※ 原価低減 7%の圧縮 ※ 人件費 3.5%の圧縮 ※ この改善により 経常利益が5%近い優良企業に生まれ変われる。 ※ B社の利点
1人あたりの経営数値に置き換えると今まで見えなかった、あるいは見えづらかった会社の実態が良く見えるようになります。その結果社員1人1人に還元した会社の再建案が立案可能となります。
3月決算が近づいてきました。決算日直前でも可能な決算対策の代表的なものを紹介します。具体的適用については専門家の税理士とよくご相談ください。 (1)決算賞与 (2)貸倒損失 (3)消耗品の購入 (4)30万円未満の減価償却資産の購入 (5)生命保険の加入 (6)1年分の家賃等の前払い (7)在庫処分 1.決算賞与・・・経費になる、ならないの分かれ目 予想以上に利益が出たら社員に決算賞与という形で還元することが会社の志気を高め来期の成長を加速させます。 ●社員に対する決算賞与を当期の経費にするための条件 (1)決算日までに支給額を社員全員に通知すること (2)決算日から1ヶ月以内に支払うこと (3)損金経理 賞与/未払金 の仕訳を決算書に計上すること 《税務調査対策》 (1)各人ごとの賞与支給明細書の会社控えに社員の確認印を押印してもらう (2)賞与の支給明細書、銀行振込書類も保存する。
2.回収できない売掛債権を貸倒損失に・・・経費になる、ならないの分かれ目 長年経営していると、売掛金、貸付金、仮払金等で回収できないものが相当残っているケースがあります。行方不明、倒産等の売掛金で残しているものがないか確認してください。 貸倒損失の要件は厳格 (1)会社更生法等の法律によって債権切り捨てが確定したもの
(4)回収不能とされた債権を内容証明で債権放棄する。 3.消耗品の購入・・・経費になる、ならないの分かれ目 ●期末購入消耗品の当期経費にするための条件 (1)毎年、おおむね一定の消耗品を購入していること。 (2)経常的に消費していること。 (3)毎期この処理を継続していること。 《税務調査対策》
4.30万円未満の減価償却資産の購入・・・経費になる、ならないの分かれ目 中小企業で青色申告法人が平成20年3月までに30万円未満の減価償却資産を購入した場合は合計300万円まで全額損金に算入できます。
5.生命保険の活用・・・経費になる、ならないの分かれ目 (社員の福利厚生費の一環として、生命保険契約を結んだ場合) 会社が契約者、社員を被保険者、受取人を死亡の場合は、社員の遺族、満期の場合は、会社とする養老保険に加入した場合、保険料の1/2を会社の経費処理にできます。年払保険料であれば、保険料の半分を経費化できます。養老保険【積立保険】ですので本来全額資産計上すべきですが、例外的に一定の要件を満たす場合は1/2を経費化することができます。一定の要件とは全員加入ですが、一定の基準の全員加入であれば認められます。社内規定で一定の範囲を明確にし、回覧しておけば大丈夫です。 (1)全員加入が適用要件 (ア)保険加入者を勤続3年以上の役員及び使用人とした場合・・・適用可能 (イ)保険加入者を係長以上にした場合・・・適用不可
(2)保険金額が被保険者の年間給与に比較して異常に高額・・・経済合理性がない (3)社員に周知徹底していない・・・単なる節税対策 生命保険の加入は、社員の福利厚生の充実が目的であり、税金逃れの小手先の手段としないことです。結果として、節税、赤字対策、資金確保、含み益経営になるという観点で取り組むべきです。 6.短期前払費用・・・経費になる、ならないの分かれ目 税法では一定の要件を満たせば、短期前払費用というものが認められています。 (1)決算日までに支払われていること。 (2)支払ってから1年以内に提供を受ける役務に係るものであること。 (3)損金経理、地代家賃/現預金という仕訳が切られていること。
※契約書で以上の条件が明確にされていなければいけません。 7.在庫処分・・・経費になる、ならないの分かれ目 不良在庫は、保管料がかかりおまけに税金もかかってきます。不必要なもの、仕入代金より販売価格が下廻るものは処分しましょう。商品評価損、除却損として経費化しましょう。 (除却の場合) (1)処分している様子をビデオや写真に撮っておく。 (2)スクラップ費用の領収書を保管しておく。 (評価損の場合) (1)棚卸表に仕入価格と処分価格を記入し、差額を評価損価格とする。 (2)商品に処分価格の値段札を付け写真を撮っておく。 以上 決算直前の決算対策を列挙しましたが、いずれも条件が厳しいので、実際の処理は専門家である顧問税理士と相談して実行してください。 |
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